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第173回東北市長会総会各県市長会提出特別決議



岩手県市長会提出

東日本大震災からの早期復旧・復興の実現に関する決議


 東日本大震災から7年が経過し,被災した各自治体が懸命の取組を続ける中,それぞれの被災自治体は,復旧・復興の段階に応じた種々の課題に引き続き直面している。
 国においては,平成28年3月に平成28年度からの5年間を「復興・創生期間」と位置付けた復興の基本方針を決定したところであるが,被災自治体において地域の実情に応じた被災者の生活再建や地域の復興に向けた取組を一層加速していくためには,復興財源の確保はもとより,復興事業に係る専門的知識を有する人材の確保,予算制度の拡充・強化,柔軟な運用等,更なる取組が必要である。
 よって,国は,被災自治体が東日本大震災からの復旧・復興を主体的かつ早期に実現できるよう,次の事項について特段の措置を講じるよう要望する。


1 復興道路等の整備促進について
 東日本大震災では,三陸縦貫自動車道などの高規格道路は損傷が少なく,津波襲来時には地域の避難場所として機能し,復旧にあたっては,救援物資運搬や緊急車両の輸送路として「命を守る道路」の役割を果たしている。
 また,内陸部と沿岸部を結ぶ東北横断自動車道釜石秋田線,国道106号,国道281号,国道340号及び国道343号等の横断道路は,内陸部からの緊急物資の輸送路としての重要性が再認識されたところである。
 今後,被災自治体が,甚大な被害を負った各産業の復興,安全・安心な暮らしが営めるまちづくり,そして観光振興,地域活性化を実現するためには,道路整備促進による「ストック効果」が必要不可欠であり,また,平成30年4月7日に本オープンした「重点道の駅たろう」を軸に三陸ジオパークを中心とした観光振興,地域活性化の実現には,道路整備促進による「ストック効果」が必要不可欠であり,平成30年6月22日に就航した宮古港と北海道室蘭港を結ぶフェリー航路は,道路整備を見越したものといえる。
 更には,2019年秋に釜石市で開催されるラグビーワールドカップ2019TMにおいて,選手の輸送や来訪者のアクセス向上のためにも,高速交通網を主軸とした縦貫道と横断道の一体的な道路整備は,最優先されるべき重要な課題であることから,次の事項について要望する。
(1) 復興道路である三陸縦貫自動車道等の三陸沿岸道路,国道106号宮古盛岡横断道路等の復興支援道路及び復興関連道路については,復興のリーディングプロジェクトとなるよう,資材や人件費の上昇により余儀なくされている増額分も含め,財源を十分に確保し,整備方針に基づく着実な事業実施により,早期に全線開通を図ること。特にも,復興道路及び復興支援道路に関しては,平成30年度の開通宣言を実現すること。
(2) 「国道340号立丸峠トンネル」及び「国道340号押角トンネル」等の社会資本の整備を着実に実施するための必要な公共事業費を確保すること。
(3) 県都盛岡市と県北沿岸地域を結ぶ国道281号は,復興支援道路に位置付けられているが,平成28年台風第10号の通過による法面崩壊や道路流出等の被害も踏まえ,県内90分構想の実現に向けて,未だ交通難所が数多く残っていることから,改良整備を促進し,構想の早期事業化を図ること。
(4) 「宮古盛岡横断道路」の未整備区間の早期事業化と,「宮古箱石道路」の現道活用区間((仮称)田鎖ICから(仮称)下茂市橋区間外)を含めた,計画路線全体にわたる高規格化を図り,災害に強い「命の道」を国により整備すること。

2 湾口防波堤の整備促進について
 東日本大震災では,大津波により,国家石油備蓄基地の地上施設をはじめ,臨海部の漁港施設,主要企業,観光施設等が壊滅的な被害を受けたところであり,市民の生命や財産を自然災害の脅威から守るためには,「命の砦」である湾口防波堤の一日も早い完成が求められるところである。
 港湾は,景気浮揚,雇用確保,環境問題への対応など,住民生活や産業振興を支える大変重要な社会基盤であり,今後の被災地域の復興を効率的に進める上で,地域経済活動の拠点である港湾を中心として,物流機能の向上と安全性の確保を図ることが必要不可欠である。
 よって,国は,平成40年度完成を目指している久慈港湾口防波堤の確実な予算確保と完成目標年度の前倒し,さらには地方負担への財政支援を含め,久慈港湾口防波堤の整備促進を図ること。

3 被災自治体の実情に応じた職員派遣について
 被災自治体では,復興事業の円滑な実施に必要な職員数確保のため,復興事業への重点的な職員配置や外部委託,任期付職員等の採用や退職者の再任用制度の積極的活用等の取組みを行っているところであるが,震災前に大幅な人員削減を行ってきたこと等の影響から,復興事業の膨大な業務量に十分に対応できる職員数を確保することは困難な状況となっている。
 一方,職員派遣を行っている自治体においては,震災発生から時間が経過するにつれて,各支援自治体においても職員派遣が困難となる状況が見受けられ,岩手県を通じて要請した職員派遣に不足が生じていることから,復興事業の停滞を招かないか危惧している。
 よって,国は,復興事業がハード事業からソフト事業へと転換していることなど,被災自治体の実情を考慮し,各支援自治体からの職員派遣に必要な措置を講じること。

4 被災(移転)跡地の利活用に係る予算枠の確保について
 被災地においては,被災された方々の住環境の確保や各種基盤整備の多くが完了を見通せるまでになったほか,水産業を中心とする生業の再生も着実に前進しており,復興への確かな歩みを実感できる段階となっている。
 一方,東日本大震災津波により被災した土地の利活用は,本格復興のまちづくりに向けた重要課題であり,住民と協働で土地利用計画を策定するなど,実現に向けた取組を鋭意進めているが,これらの取組にあたっては,点在する被災(移転)跡地の集約や他の復興事業との調整などが必要不可欠であり,今後においても相当の期間を要すると見込まれている。
 よって,国は,「復興・創生期間」において,被災(移転)跡地の利活用に対する継続的かつ十分な予算配分を行うこと。

5 原木しいたけ産地の再生について
(1) 原木しいたけ生産の再生のための生産再開の妨げとなっている原木購入価格の高騰に対する積極的な追加支援をはじめとした,生産農家の立場に立った各種助成制度など,総合的な再建支援制度を継続すること。
(2) ほだ場の落葉層除去によって発生する落葉層の最終処分方法を提示し,その処理に関する全面的な支援を行うこと。

6 固定資産税の減収補填措置の継続について
 東日本大震災で被災した住宅用地について,地方税法附則第56条第1項の規定により被災後10年度分について住宅用地とみなし,住宅用地特例が適用(被災住宅用地特例)されている。
 土地区画整理事業に伴う仮換地の指定があった場合にも,同法附則第56条第6項から第9項の規定により被災住宅用地特例が同様に適用になる。
 しかし,換地処分が行われた後には被災住宅用地特例が適用にならず,換地処分が行われても防潮堤の復旧が完了していない地区においては,安心して住宅を再建できる状態になっていない。
 このため,地方税法第367条の規定に基づき条例を定め,換地処分が行われた後の被災住宅用地について,防潮堤の復旧が完了していない地区の固定資産税を減免する措置を講じる必要が生じている。
 よって,国は,地方税法第367条の規定に基づき条例を定め,被災者の固定資産税の減免措置を講じた場合について,震災復興特別交付税の対象とする措置を継続すること。

7 東日本大震災復興特別区域法における固定資産税課税免除期間の延長及び税制優遇措置の継続について
 東日本大震災復興特別区域法(以下「復興特区法」という。)に基づき,復興推進計画において定めた復興産業集積区域において,集積業種を行う事業者に対し,固定資産税の課税免除を実施し,これに伴う地方税の減収額に対し,減収補てん措置がとられている。
 復興特区法に基づく国税の減免措置における機械・装置を取得等した場合の特別償却率は,平成30年度までは50%に対し,平成31年度以降は34%,併せて,地方税の課税免除を行った場合の県,市町村への減収補てん措置期間については,復興特区法第43条の規定により5年間を限度としており,減収額に対する減収補てん割合については,平成30年度までの10分の10に対し,平成31年度以降は4分の3となるなど,措置の引き下げが行われる。
 課税免除期間は,復興特区法第43条の規定に基づき,条例において初年度の課税から5年間と規定され,宮古市の場合,平成24年度の条例改正から起算し,平成29年度をもって5年間の課税免除期間が終了し,平成30年度から課税となった事業者が現れている。しかし,東日本大震災による被災に加え,平成28年台風第10号豪雨災害や近年の水産物の漁獲量の減少により,未だ業績の回復が見込めない事業者がいる。
 特に,水産物については,平成29年度の水揚げ量が震災前の約4割にまで落ち込んでいることから,水産加工事業者を中心に深刻な状況であり,被災事業者の支援と再建を図る目的から課税免除期間を延長し,税負担の軽減を行う必要がある。
 よって,国は,復興特区法第43条の規定を改正し,市町村が固定資産税の課税免除期間について,5年間を超えて延長した場合における減収額についても,減収補てんの措置を講じるとともに,平成31年度以降の減収補てん割合の引き下げを行わないこと。

8 原発事故に対する対応について
(1) 農林業系汚染廃棄物の早期処理について
ア 農林業系汚染廃棄物の処理加速化事業をその処理が終了するまで継続すること。
イ 農林業系汚染廃棄物の適切な処理の促進と最終処分までの適切な保管を継続するため,現場の実態に応じて財政的・技術的支援を継続すること。
(2) 原子力損害賠償に係る東京電力ホールディングス株式会社への指導強化について
ア 原発事故の原因者としての責任を自覚した上で,山菜・野生きのこ類の出荷制限による損害を受けた産直団体や,根拠書類等を提出できないために損害賠償請求できずにいる産直組織等が行う請求事務の簡素化等により,生産者の負担にならない賠償請求事務が行えるよう強く指導すること。
イ 原木しいたけ生産の廃業に伴って不要となる施設,機械設備の賠償方針を早期に示すよう強く指導すること。
ウ しいたけ用原木として利用できない地域での山林や立木等のいわゆる財物に対する賠償をするよう強く指導すること。
エ 原木しいたけ再生産に向けた取組に要した費用に対する賠償を継続するよう強く指導すること。
オ 市町村からの賠償請求に対し,迅速に支払いに応じるよう強く指導すること。

9 復興完遂までの各種支援の継続について
 地域の実情に応じた被災者の生活再建や復興に向けた取り組みを一層加速していくためには,復興財源の確保をはじめ,予算制度の拡充・強化,柔軟な運用等,更なる取り組みが必要であることから,復興・創生期間の終期にこだわらず,復興完遂まで各種支援を含めた取組を継続すること。




宮城県市長会提出

東日本大震災からの復旧・復興に関する決議


 東日本大震災から7年が経過したが,それぞれの被災自治体では,まだまだ復旧・復興の段階に応じた種々の課題に直面している。
 被災自治体において地域の実情に応じた被災者の生活再建や地域の復興に向けた取組みを一層加速していくためには,復興財源の確保はもとより,予算制度の拡充・強化,柔軟な運用等,更なる取組みが必要である。
 よって,国は,被災地の一日も早い復旧・復興が実現されるよう,次の事項について特段の措置を講じるよう要望する。



1.復旧・復興事業の実態に即した財政支援等について
(1) 震災からの復興を成し遂げるために必要な事業について,今後とも復興の進捗に応じ,財源を確実に措置すること。
(2) 復興事業の実施にあたり,震災記憶の風化及び熊本地震の影響から,各支援自治体では人員派遣が困難となる状況が見受けられることから,復興を遂げるまでの間,被災市町村への職員派遣について必要な措置を講じること。また,被災地で勤務する職員及び元派遣職員を含めた派遣職員に対するメンタルヘルス対策は極めて重要であることから,平成28年度から実施されている「東日本大震災に関連するメンタルヘルス対策5か年事業」については,被災自治体の要望も踏まえつつ,5年間同様の措置で継続すること。
(3) 災害援護資金の貸付は,所得が一定額に満たない世帯の世帯主を対象としている制度であることから,震災から期間が経過した現在においても依然として生活困窮の状況から抜け出せず約定による償還が困難な者が存在している状況である。よって,国は,自治体が,災害援護資金の支払猶予を適用し,借受人の償還期間を延長した場合には,自治体の国に対する償還期間を延長すること。また,災害弔慰金の支給等に関する法律等に規定されている償還免除について具体的な基準を明示すること。併せて,債権回収に向けた自治体個々の取組みに係る経費について助成を行うとともに,国において債権回収機構等を設置し,専門的かつ専属的に債権回収を実施すること。
(4) 復興特区法に基づく,国税の減免措置及び地方税の減免を行った自治体に対する減収補てん措置の適用期限は平成32年度末まで延長されたが,一方,平成31年度以降、国税減免措置における機械装置を取得等した場合の特別償却率は50%から34%へ,地方税の課税免除を行った場合の自治体への減収補てん率は10/10から3/4へと,措置の引き下げが行われることとなっている。
津波被害等が甚大であった被災地域の現状に鑑み,地域における生業や産業の再生を確かなものとするため,平成31年度以降の適用についても現在と同率の措置を継続し,また,復興・創生期間終了後に生じる減収分も含め、現在と同様の措置を継続すること。
さらに,平成32年度末までとされている復興特区における税制上の特例措置の期限を,平成33年度以降についても延長すること。

2.被災者の生活再建支援等について
(1) 震災以降の心のケアが必要な児童生徒に対して,よりきめ細かな教育を実現し,豊かな教育環境を整備するため,小中学校全学年の35人以下学級早期実現など弾力的な学級編制が可能となるよう復興加配教員等の継続した配置を図ること。
(2) 震災によるPTSDを抱える児童・生徒への対応等について,長期的な支援が必要不可欠であることから養護教諭や就学援助の増加等に対応する事務職員も含めた加配の充実を図ること。
(3) 被災児童生徒就学支援等事業について,平成31年度以降も全額国費による支援を継続するとともに,被災児童生徒就学支援等事業交付金により実施されている通学補助制度について,被災者の生活再建が完了するまで継続的に措置すること。
(4) 被災者の孤立防止のための見守りやコミュニティづくり,心のケアを含む健康支援等,生活再建に向けた各種支援施策を被災自治体や被災者支援団体等が継続的,安定的に実施できるよう,被災者支援総合交付金の交付期間の延長またはそれに変わる補助金等の新設等,必要かつ十分な財政支援を長期的に行うこと。
(5) 国民健康保険及び介護保険の一部負担金等免除措置について,国の責任において全額財政支援措置を講じ,被災地の保険者が震災の影響による保険財政の逼迫を招くことなく,円滑かつ健全な制度運営ができるよう,一層の措置を講じること。
(6) 被災者生活再建支援金について,津波により住家全体が流失・滅失した場合の支援拡充や宅地被害に対する支援の必要性など,さまざまな課題が明らかとなったことから,総合的な制度の見直しを図ること。

3.地域産業の復興・再生及び公共施設等の復旧支援について
(1) 津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金について,交付申請期限を平成31年3月末から平成33年3月末まで,事業完了期間を平成33年3月末から平成35年3月末まで,それぞれ2年延長を行うこと。また,事業完了期限などの課題が生じた場合には,再延長を含め,復興の状況を踏まえた柔軟な措置を行うこと。
(2) 中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業について,平成32年度まで制度を継続するとともに,従前地以外の場所に仮復旧を行うなど,段階的な復旧を行った事業者には,その補助対象枠を拡大するなど柔軟な制度運用を行うこと。
(3) 農業集落排水施設事業の廃止に係る農業集落排水施設の撤去及び充填処理等を国費で対応するとともに,廃止に伴い滅失を行う施設について残存する債務の償還を免除する制度の創設を検討すること。
(4) 震災以後,大雨時に仙塩流域下水道管内市町において,地盤沈下や地下水位の変動などに起因していると考えられる公共下水道(汚水)マンホールからの溢水が見受けられ,公衆衛生や市民の健康への影響が懸念されていることから,早急な対応,解決のため必要かつ十分な財政支援を講じること。

4.原発事故に対する対応について
(1) 放射性物質で汚染された廃棄物や土壌,焼却灰等の管理・中間処理・最終処分などの処理のプロセスや仮置場・長期管理施設の設置等について,国が主体的に責任を持って住民に説明するとともに,基準を超える廃棄物の処理及び必要な施設の設置について,国が迅速に責任をもって対応すること。また,8,000Bq/kg以下の一般廃棄物扱いとなる汚染廃棄物についても,市町村における処分は,処理期間の問題や処理施設周辺住民の強い拒絶感があり,指定廃棄物と一体的な処理を国が責任をもって行うこと。一方で,8,000Bq/kg以下の一般廃棄物扱いとなる汚染廃棄物について,市町村が処理に取組む場合は,国は柔軟な対応と十分な負担を行うこと。
(2) 国から委託を受け市町村が保管している指定廃棄物について,住民の強い不安感を取り除くとともに,指定の取り消しを検討する材料とするため,放射能濃度等の現状を把握する必要があるので,国は調査経費を財政措置すること。
(3) 汚染状況重点調査地域に指定され,除染対象とされた区域から生じた除去土壌の処分基準を定める省令の早期策定を求めるとともに,その処分先の確保について,国が主体的に責任を持って対応すること。
(4) 親水空間として多くの市民が利用している河川等の除染対策の方針を早急に示すとともに,適切な措置が講じられるまでは,測定ポイントを河川毎に適切に選定の上,空間放射線量の測定を継続的に実施し公表する等,十分な情報提供を行うこと。
(5) 福島第一原子力発電所の汚染水対策について,平成25年9月に国が前面に出て汚染水対策を実行していくという基本方針を発表しているが,その後も流出が疑われる事態が判明していることから,国が主体的に取り組み,実効性のある地下水対策,汚染水流出阻止及び風評被害防止に関する措置を速やかに実施すること。
(6) 放射線による健康影響調査について,国の責任と判断において,調査実施の必要性や対応方針に関する明確な基準を早急に示し,必要があると認められた場合は,国の責任において調査を実施すること。
(7) 原発事故に起因する農林畜産物,水産物に係る風評被害対策を講じるとともに,東京電力に対し損害賠償の拡大及び早期支払を指導すること。また,観光業の風評被害について,宮城県内の観光業に対する影響を正しく認識し,福島県と同様の内容で損害賠償するとともに,東京電力に対しては,東北以外の地域からの観光客入込みに限った損害賠償対象を拡大し,震災後わずか1年間とした対象期間を将来にわたって認めるよう指導すること。
(8) 原発事故子ども・被災者支援法の基本方針で定めた支援施策を推進する支援対象地域,準支援対象地域について,同法に定める一定基準以上の放射線量が計測された地域の基準を,合理的に説明できるものにすること。
(9) イノシシ被害が年々拡大し,イノシシ自体が生息域を広げながら繁殖を続けている状況下においては,単一の市町村だけでの対策では限界があることから,国・県が主体となり,広域的な対策(駆除,防除及び処分等)を行うこと。
(10)30km圏外の地域に対する原子力防災対策の基準や対策の具体的内容を早急に明らかにするとともに,対策実施段階での具体的な手順や方法を提示し,対策に要する費用について十分な財政措置を講じること。特にモニタリングポストの設置等,防護対策のための資機材の整備・維持管理に係る財源措置を講じること。




福島県市長会提出

東日本大震災からの復興に関する決議


 東日本大震災は,広範囲にわたり甚大な被害をもたらした大規模な災害であり,その影響は被災地域のみならず,全国規模に及ぶ未曾有の事態となり,その被害への対応は自治体のみでは困難なほど甚大なものである。
 よって,国は,次の事項について特段の措置を講じるよう要望する。



1 復旧・復興事業の実態に即した財政支援等について
(1) 震災からの復興を成し遂げるために必要な事業について,今後とも復興の進捗に応じ,復興交付金(特に市街地復興効果促進事業),社会資本整備総合交付金(復興枠)等復興関連の交付金制度及び震災復興特別交付税による財政支援等について,柔軟な対応や予算規模の拡充を図るとともに,復旧・復興が完了するまで継続すること。
また,復興交付金を,地方創生のモデルとなる取組にも活用できるよう被災地の自立につながる取組や避難解除等区域等と連携して取り組む事業,防集移転元地の具体的利用計画がない段階においても利活用に際し必ず必要となる最小限の基盤整備など,被災地が必要と考える取組に柔軟に対応するとともに,復興交付金(特に一括配分された交付金)や福島再生加速化交付金のほか,防災関連事業については,被災地が実情を勘案し必要と認める事業が着実に実施できるよう制度を弾力的に運用すること。
(2) 被災地で勤務する職員及び元派遣職員を含めた派遣職員に対するメンタルヘルス対策は極めて重要であることから,平成28年度から実施されている「東日本大震災に関連するメンタルヘルス対策5か年事業」について,被災自治体の要望を踏まえつつ,5年間同様の措置で継続すること。
(3) 災害援護資金貸付金の償還について,自治体が貸付金に係る債権を免除又は放棄することが適当であると判断する場合に国が自治体に対する債権を免除するよう,自治体が判断するガイドラインを自治体の意見を聞いて早急に整備すること。
なお,ガイドライン整備に当たっては,自己破産者及び所在不明者を債権免除の対象に含めること。

2 被災者の生活再建支援等について
(1) 東日本大震災特別家賃低減事業について,建物管理開始後6年目以降は災害公営住宅の入居者の家賃の負担割合が段階的に増え,国の補助額は低減することとなっているが,収入の増加の見込めない高齢者世帯など,入居者の状況に応じ自治体独自に減免を行った場合において財政措置を講じるとともに,事業期間を延長し,自治体が11年目以降も減免を行う場合には同様の措置を講じること。
(2) 東日本大震災等の影響による医療費の増加は,今後も続くことが想定されることから,医療費増加に伴う負担増分として財政支援を継続すること。
(3) 津波により広域かつ甚大な被害を受けた沿岸地域において,全壊家屋の再建等に対し最大 300万円を支給する被災者生活再建支援制度があるものの,被災者の中には高齢者や生活困窮者など自宅再建が困難な方もいることや半壊家屋については対象外となっているなど課題が明らかとなったことから,被災者が自らの望む生活再建を果たせるよう,被災者の生活状況や被災地の実態等を踏まえ,被災者生活再建支援制度の上限額や適用範囲などの拡充を図ること。

3 地域産業の復興・再生について
 被災地において若者の地元定着を図るため,新たな企業誘致や雇用機会の創出の対策を講じるとともに,地域で働く意識醸成やUJIターン促進に向けた取組に対する財政措置を講じること。

4 公共施設等の復旧支援について
(1) 復興道路・復興支援道路の供用までには期間を要することから,事業を確実に実施するために,完成まで継続的に財源を確保するとともに早期供用を図ること。
また,東北中央自動車道相馬・福島道路については,相双地域から福島県立医科大学付属病院への搬送時間を大幅に短縮するなど,福島復興に大きく貢献することが期待されているが,国道13号福島西道路の南伸により,その搬送時間はさらに大きく短縮することが期待され,災害時の代替路を確保できる効果や物流の向上による産業復興も期待できることから,福島西道路の南伸事業を復興に不可欠なものとして,更なる事業の加速化を図ること。
(2) 国は復興道路・復興支援道路の緊急整備など被災地域の早期復旧・復興に全力で取り組むとしているが,避難者の生活支援など被災地域の確実な復興再生を図るためには,更なる幹線道路網の充実強化や地域の復興に寄与する道路整備を促進する必要があることから,重要物流道路について,常磐自動車道,磐越自動車道,一般国道6号・49号はもとより,主要物流拠点や災害時の拠点施設とを接続する基幹道路等を指定し,平常時・災害時を問わない安定的な輸送を確保できるよう,指定された道路の機能強化や整備に重点支援を行うこと。
(3) 地方特定道路整備事業の廃止は,地方自治体の負担の著しい増大をもたらしていることから,計画的な道路整備事業の実施のため,代替措置を講じるなど財政支援を行うこと。
(4) 復興を加速化させていくためには,JR常磐線の全線再開及び利便性の向上は必須であり,双葉地区の方々の早期帰還をはじめ,福島県の復興を強く印象づけることによる観光やビジネスの復興,国内外からの交流人口の拡大,福島第一原子力発電所の廃炉作業の加速化,福島・国際研究産業都市構想(イノベーション・コースト構想)の実現,2020年東京オリンピック・パラリンピックにおけるインバウンド促進等に繋がることから,安全に配慮しながら,少しでも早い全線開通に向けた取組に努めるとともに,運転再開に当たり,福島県浜通り地方と東京を直通で結ぶ特急列車や,福島県浜通り地方と仙台を結ぶ快速列車など,震災前より利便性の向上を図るようJR東日本に対する助言・指導を講じること。
(5) 東日本大震災により沿岸部においては地盤沈下により,広範囲にわたって浸水したことから,住民の生活基盤再建のため,雨水排水のためのポンプ場をはじめ震災からの復旧に不可欠な施設を整備したところであるが,これら施設の維持管理費について基準財政需要額に算入し,交付税措置を講じること。
また,これら施設は恒久的に活用するものであり,将来老朽化に伴う更新費用も必要となるため,改築・更新に対する財政支援を今後検討すること。




福島県市長会提出

東京電力福島第一原子力発電所事故への対応に関する決議

 東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により,平成30年10月現在で,福島県民だけでも4万3千人余もの方々が避難を余儀なくされている。
 東京電力福島第一原子力発電所事故は,放射線被ばくによる健康被害への不安,風評による観光客の激減など様々な影響を及ぼしている。
 よって,国は,原発事故の早期収束へ向け,自らの責任のもと着実な取組を強力に推進するとともに,正確な情報の迅速な公表に努め,次の事項について,特段の措置を講じるよう要望する。


1 原子力発電所事故に関する対応への財政支援等について
(1) 全国的に景気の回復・拡大基調が強まる中で,原子力災害による風評,除染・復興関連事業のピークアウトなどから,福島県経済だけは唯一,回復の動きが鈍化しており,今後の推移が懸念される状況にある。このため,復興・創生期間終了後も,ふくしま復興に関する特段の対策が必要であり,その計画的な推進を図るためにも,財政支援の枠組みを早期に示すとともに,農林水産物に係る風評の払拭,観光の再生,企業立地に関する特別な補助制度など,福島県経済の自立的発展を可能とするような特別対策,並びに,風評・偏見の解消とそれに対する心の復興に関する対策及び避難者の受入れ自治体が適切にサービス提供ができる財政措置を講じるなど被災市町村の状況に即した切れ目のない財政支援について,避難指示が出された区域以外も含めて特段の措置を講じること。
(2) 復興・創生期間において放射能災害として実施する除染・放射線のモニタリング,健康管理,食品の放射線量測定,風評被害対策など,原発事故由来の事業については,復興・創生期間以後も長期に及ぶことが予想されるため,全額国費による財政措置を長期的に継続すること。
(3) 福島再生加速化交付金及び被災者支援総合交付金を継続するとともに十分な財政措置を講じること。
 また,運用にあたり,避難者の早期帰還や再生促進などのニーズに応えられるよう対象事業の拡充を図るとともに,避難者の受入れ自治体も活用できるよう対象地域の拡充を図ること。 なお,福島再生加速化交付金の「個人線量管理・線量低減活動支援事業」「相談員育成・配置事業」「農山村地域復興基盤総合整備事業のうち,ため池の底泥流入・拡散防止対策」について,今後もこれまで同様,地域の実情に応じた柔軟な対応と十分な財源の確保を継続すること。
(4) 原子力災害に伴う市税の減収分の全額について,財政措置を講じること。
(5) 避難先で復興公営住宅に継続して入居を希望する避難者や新規に入居を希望する避難者に対して,居住制限者,特定帰還者,旧居住制限者等を問わず,今後も継続して家賃補助を行うとともに,十分な財源を確保すること。
(6) 避難指示区域等からの長期避難者については住民票を「避難元自治体に置いたままで差し支えない」とされているが,避難者と受入れ自治体住民との融和促進に向けて,税負担の公平性の観点から,住民票の扱いについて見直すこと。

2 放射性物質の除染対策について
(1) 放射性物質汚染廃棄物の最終処分までの計画を早期に示すこと。
(2) 中間貯蔵施設設置の実施工程を明確にするとともに,施設の早期完成に努めること。
 また,中間貯蔵施設への輸送について,国は各市町村の年度別輸送量を含めた全体的な搬送計画を早期かつ明確に示すとともに,輸送量の拡大を図り,輸送の早期完了に努めること。
 積込場の整備については,除去土壌等の輸送のピークを見据え,民有地の活用に対する支援など地域の実情に即した柔軟な対応とそれに伴う安定的な財政措置を講じること。
(3) 仮置き場の早期解消に向けた除去土壌等の輸送を加速化すること。
 また,面的除染完了後も,除去土壌等の適正管理・搬出のほか仮置場の原状回復などについて,地域の実情に即した柔軟な対応とそれに伴う安定的な財政措置を講じること。
(4) 福島県においては,8,000Bq/kgを超え100,000Bq/kg以下の飛灰等を埋立処理するセメント固型化施設の整備を早急に進め搬出を速やかに行うこと。8,000Bq/kg以下の一般廃棄物扱いとなる汚染廃棄物について,市における処分は,処理期間の問題や処理施設周辺住民の強い拒絶感があることから,中間貯蔵施設へ搬入するとともに,8,000Bq/kg以下の道路等側溝堆積物についても,国の責任により処理すること。
また,100,000Bq/kgを超える指定廃棄物について,処理のスケジュールを早期に示すこと。
(5) フォローアップ除染について,除染終了後,その後新たに線量が高い箇所が見つかった場合には,速やかに国において現地調査を行い,引き続き自治体の判断による迅速な実施が可能となるような体制を維持すること。
(6) 河川は基本的に除染対象外となっており,震災以降,河川環境整備がなされておらず,原子力発電所の20km圏内については住民の帰還意欲に悪影響を及ぼしていることから,自治体による福島県原子力避難区域等帰還・再生加速化事業を活用した河川の草刈りも行われているが,洪水発生を防ぎ安全安心な市民生活,及び農業用水取水や耕作における安全性確保のため,国が20km圏内外を問わず河川環境を整備すること。
(7) 除染の進捗や中間貯蔵施設への安全かつ円滑な搬入のため重要となる県内の基幹的な道路の整備,特に,常磐自動車道の早期全線4車線化,国道6号の南相馬市内一部4車線化を含む早期整備完了,国道49号及び399号の早期整備完了,相馬福島道路の早期完成のため,十分な整備予算を確保するとともに,原子力災害からの復興・再生,避難住民の帰還を加速させるため,福島県南相馬市小高地区に(仮称)小高スマートインターチェンジを設置すること。
 また,汚染土壌の仮置き場への搬入及び中間貯蔵施設への搬出による更なる道路の破損や交通量の増加等が懸念されることから,道路の拡幅及び路面破損時の修繕等を併せた仮置き場までのアクセス道路の環境整備について,現場の実情に即した柔軟な対応とそれに伴う安定的な財政措置を講じること。

3 廃炉・汚染水対策について
(1)  廃炉対策について,事業者に任せることなく国が前面に立ち,国内外からの英知を結集し,燃料デブリの取り出しを含め,安全かつ確実に完遂すること。
(2)  汚染水対策について,国が主体的に取り組み,実効性のある地下水対策,汚染水流出阻止対策及び正確で迅速な情報発信など風評被害防止に関する措置を可及的速やかに実施すること。

4 放射能教育について
 国民の間で放射能に関する理解が進んでいないことから,高等学校の入学試験や国が関わる試験に放射能に関する設問を検討するなど,子どもから大人まで幅広い年齢層が放射能に関する正しい知識を習得するとともに,これに基づき適切に行動する能力の向上を図るためのあらゆる施策を国を挙げて取り組むこと。

5 食品の安全確保対策への支援について
(1) 風評被害対策として,国内外に向けた福島県産農林水産物の安全性をPRする広報活動を国の主導により展開すること。
また,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会において,GAP(農業生産工程管理)やMSC(海のエコラベル)等の認証を受けた福島県産農林水産物を積極的に活用すること。
(2) 福島県産農林水産物の出荷制限による生産者の所得や生産意欲の低下を防ぐため,新たな作付や作物の開発等技術的対策を強化すること。
(3) 原発事故の影響により,特に漁業の風評被害が深刻であることから,その対策として,地産地消を目的に第三セクター等が市場を整備し,イベント等を行うことに対する支援策を講じること。
(4) 米の全量全袋検査を実施するに当たり,補助金及び賠償金で不足額が生じた部分について,引き続き震災復興特別交付税による補てんを継続すること。
(5) モニタリング体制の維持・充実を図りながら,地域の安全性に係る正確な情報を積極的に発信するとともに,福島県で生産された農林水産物や商工業品に係る放射性物質検査体制の構築や積極的なPRなど,地域と連携した取組を推進すること。

6 原子力発電所事故に伴う損害賠償の適正な実施及び迅速化について
(1) 農林水産業に係る営業損害については,依然として県内全域で風評被害が発生している状況を踏まえ,十分な賠償が確実に継続されるようにすること。
(2) 商工業等に係る営業損害の一括賠償については,原子力発電所事故との相当因果関係の確認に当たり,個別訪問等による実態把握に努め,定性的要因を積極的に採用するなど,簡易な手法で柔軟に行うとともに,個別具体的な事情による損害についても誠意を持って対応させること。
 また,一括賠償で年間逸失利益の2倍相当額の賠償を受けられなかった被害者からの相談や請求についても相談窓口等で丁寧に対応し,状況の変化があれば,的確な賠償を行わせること。
(3) 商工業等に係る営業損害について,同様の損害を受けている被害者が請求の方法や時期によって賠償の対応に相違が生じることのないよう,風評被害の相当因果関係の類型,判断根拠,東京電力の運用基準や個別事情に対応した事例を公表・周知するとともに,被害者への分かりやすい丁寧な説明を徹底して行わせること。
(4) 商工業等に係る営業損害の一括賠償後の取扱いについて,被害者からの相談や請求に丁寧に対応し,地域の状況や事業の特殊性,個別具体的な事情をしっかりと把握した上で,損害の範囲を幅広く捉え,被害の実態に見合った賠償を的確かつ迅速に行わせること。
 また,原子力発電所事故との相当因果関係の確認に当たっては,一括賠償請求時の提出書類を最大限活用するなど,手続の簡素化に取り組み,被害者の負担を軽減させること。
(5) 原子力損害賠償紛争解決センターが提示する「総括基準」や「和解仲介案」を原子力災害の原因者としての自覚を持って積極的に受け入れ,確実かつ迅速に賠償を行わせること。
 また,同様の損害を受けている被害者に対しては,和解仲介の手続によらず,直接請求によって一律に対応させること。
(6) 原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介実例を被害の状況が類似している地域等において同様に生じている損害に適用し,直接請求により全ての被害者への公平な賠償を確実かつ迅速に行わせること。
(7) 多くの被害者に共通する損害については,類型化による原子力損害賠償紛争審査会中間指針への反映によって確実かつ迅速に賠償がなされるべきものであることから,住民や地域,市町村に混乱を生じさせないよう,審査会における審議を通し,賠償の対象となる損害の範囲を具体的かつ明瞭に指針として示すこと。
また,被災者に対する損害賠償を円滑に行うため,手続きを簡略化させるよう指導するとともに,総合的な判断ができる総括責任者を福島原子力補償相談室に常駐させること。
(8) 市民や企業が自ら行った除染費用については,東京電力が全額賠償するよう強く指導するとともに,対象期間について,平成24年10月1日以降の期間も対象とすること。
(9) 放射能による不安や精神的苦痛を抱えたまま生活を余儀なくされている現状を受け止め,平成24年9月以降の精神的損害に対して,迅速かつ誠実に賠償を行わせること。
また,旧屋内退避区域と旧緊急時避難準備区域における精神的損害にかかる賠償期間の公平な取扱いを行うとともに,旧屋内退避区域に係る財物賠償を早期決定すること。
(10) 自治体が住民の安全・安心を守るために行っている様々な検査等に要する費用や地域の復興のために実施している風評被害対策などの事業に要する費用等は,政府指示の有無に関わらず事故との因果関係が明らかであることから,賠償請求手続を簡素化するとともに,確実かつ迅速に賠償を行わせること。
(11) 原子力発電所事故によって生じた税収の減少分について,目的税はもとより固定資産税を含む普通税も確実に賠償を行わせること。
また,自主避難者の発生に伴う水道使用料金の減収について全て確実に賠償を行わせること。
(12) 復興をさらに加速させる観点から,自治体の財物の賠償については,県や市町村等の意向を十分に踏まえ,迅速に賠償を行うとともに,インフラや立木の取扱いなどを含め,個別具体的な事情による損害についても柔軟に対応させること。
(13) 原子力損害賠償紛争解決センターによる県や市町村の和解仲介実例を被害の状況が類似している他の自治体における損害にも適用し,直接請求により公平な賠償を確実かつ迅速に行わせること。

7 住民の健康確保等について
(1) 原子力災害に伴う健康管理対策に関して,国は責任をもって主体的に取り組むこと。また,福島県内の自治体に今後の方針等を説明,及び意見交換を行うこと。
(2) 原発事故の影響により医療・介護人材が流出し,人手不足が深刻化していることから,医師,看護師,介護職員等確保のための人件費補助など医療機関等への支援や自治体への財政措置を継続すること。
(3) 全ての被災者の健康の確保,特に子どもたち,高齢者等の心と体のケアや学校現場での対応への人的及び財政的措置を講じること。
(4) 内部被ばく検査・外部被ばく検査に係る経費及び長期的な健康管理に要する全ての費用や検査機器購入費用について財政措置を講じるとともに,健康に関する個人データの管理運用に対する新たな財政支援を行うこと。
(5) 県民健康調査における甲状腺検査では,甲状腺がん発症率に福島県内における地域差は認められず,原発事故の影響ではないとされていることから,この調査結果を実証するため,被ばくと甲状腺がんの因果関係を検証すること。
(6) 長期にわたり18 歳までの医療費無料化を行うこと。
(7) 原子力災害の影響により,要支援・要介護認定者が増加しているにも関わらずスタッフ不足により全面稼働できない施設があることや,保育士が確保できず待機児童が発生している施設があるなど十分な福祉サービスが提供できない状況にあり,避難者の帰還を妨げる要因となっていることから,障がい者支援施設及び介護保険施設従事者,並びに,保育士及び幼稚園教諭の確保に向けた財政支援を講じること。
(8) 原子力災害による避難地域において魅力ある教育・保育内容を実現できる運営体制を確保するため,子どものための教育・保育給付費の公定価格に特別な地域区分を創設するとともに,公立施設に対しても同様に財源を確保することにより,この地域における幼児期の教育・保育の安定的な提供を積極的に支援すること。

8 産業の流出防止と支援について
(1) 原子力災害の影響,除染・復興関連事業のピークアウトなどに伴い,福島県経済だけが景気の回復基調が弱くなっている。このため,企業立地を促進し地域経済の自立的発展を可能とするよう,平成31年4月以降も津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地を延長すること。
(2) 風評払拭のため,国内外への情報提供や販路拡大国際会議等コンベンションの開催・誘致,必要な施設の整備等幅広い施策を講じること。
(3) 風評により落ち込む観光客の回復を図るため,観光地のハード整備,観光施策の人的支援などの各種施策に対する財政措置,2020年東京オリンピック・パラリンピック等による訪日外国人も含めた受入のための宿泊施設の整備・改修等にかかる補助制度の創設など,国内外からの観光誘客に資するあらゆる施策を講じること。
(4) 旧避難指示区域等における産業再生を実現するためには,地域産業の中核を担う人材育成が最重要課題の一つであることから,国は,広域的な視点から旧避難指示区域等における人材育成をけん引するとともに,支援企業の発掘や人員の派遣等,重点的な支援を講じること。
(5) 風評も含めあらゆる分野において厳しい状況が続いていることから,地域経済の活性化と安定した雇用の創出を図るため,企業誘致等に必要な土地利用に関する規制緩和及び財政措置を講じるとともに,新たな企業誘致に繋がる工業団地の整備に際し必要となる用地費用,造成工事・アクセス道路の整備費用など,財政措置を講じること。
また,空き店舗等の解消に係る財政措置,税制や融資・助成などを含めた中小企業への総合的な支援策,及び被災地における先進的な取組を行っている企業等に対する支援策を講じること。
(6) 復興特区制度について,より一層の企業活動の活性化や雇用促進を図るため,人口30万人以上の都市等において課税することとなっている事業所税についても,税制優遇措置の対象税目に加えること。
(7) 原発被災地におけるイノシシによる被害については,野生動物肉の出荷制限に起因する狩猟者の減少等により,農作物被害が広域化かつ深刻化していることから,被害防止体制の強化が図れるよう,復興財源の活用も含めて十分な財源を確保するとともに,国と県とが連携して対策を強化すること。
 また,狩猟者が不足しその育成・確保が急務であることから,射撃場における弾丸の補助等狩猟技術向上のための経費について支援措置を講じること。

9 新たな産業と雇用創出の支援について
(1) 福島県を再生可能エネルギー先駆けの地とする福島新エネ社会構想の実現に向け,誰もが安価でどこでも再生可能エネルギーや新エネルギーを活用できる環境整備が必要であることから,官民に関わらず,障害となる規制の緩和,必要な技術指導,人材育成,財政措置等の積極的な支援を行うこと。
(2) 民間企業等による水素エネルギーシステムの開発への支援,水素需要の創出と水素ステーションなどの供給体制の整備を図ること。
(3) 再生可能エネルギーに係る事業化検討に当たり,固定価格買取制度の適正な運用に努めるとともに,既存送電網に空き容量が不十分な地域においては,系統増強の費用が莫大となるため事業化に踏み切れない発電事業者が多いことから,国が主導して系統増強を推進するとともに,発電事業者及び電気事業者が負担すべき費用に対する財政支援を行うなど,広域的な系統利用システムの構築や送電網強化に関して電力会社と連携して,国が主体的に取り組むこと。
(4) 地域産業への波及と実効性が担保されるよう,地域の意見等を十分に踏まえ,福島・国際研究産業都市構想(イノベーション・コースト構想)が完全に実現するまで継続して主導していくとともに,中・長期的な財源確保を図ること。
(5) 旧避難指示区域等における新たな産業創出の取組を福島・国際研究産業都市構想の支援対象とするなど,対象事業の拡大を含め柔軟な対応を図ること。
(6) ロボットテストフィールド・国際産学官共同利用施設が国内外のロボット関連企業に活用されるようPRを強化するとともに,交流人口拡大に向けた取組を支援すること。
(7) ロボット産業を集積させるため,企業立地を促す「自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金」や企業の技術革新を促す「地域復興実用化開発等促進事業費補助金」の期間を延長すること。また,マッチング促進支援など既存企業への支援を強化するとともに,被災事業者の帰還・再建を促す支援「福島県原子力被災事業者事業再開等支援補助金」の継続と十分な予算を確保すること。
(8) 福島復興再生特別措置法に基づく福島復興再生基本方針に則して,内閣総理大臣の認定を受けた重点推進計画において「常磐自動車道のインターチェンジから各拠点へのアクセス機能,及び各拠点間を結ぶアクセス道路網の強化を図る」とされた福島ロボットテストフィールドと南相馬インターチェンジを結ぶインターアクセス道路(都市計画道路下高平北長野線)について,早期整備のため十分な支援を講じること。

10 事故の影響を受けた地域における治安維持のための支援について
 復旧・復興事業が進捗する一方で,住民が移転した復興住宅団地や帰還先などで新たな地域コミュニティを形成するとともに,防犯体制を再構築して安心できる居住環境をつくる必要があることから,各自治体が実施する治安の維持向上に向けたパトロール等治安維持への取組,防犯カメラの設置及び児童・生徒に対する防犯ブザーの配付などに対する制度的・財政的支援を講じること。



 
青森県市長会提出

地方財政基盤の充実強化について


 
 地方自治体は,行政需要が増大,多様化する現状にあってなお,事務事業の見直しや職員数の抑制等による歳出削減に取り組み,行財政基盤の強化に努めてきたところであるが,景気回復局面における地域格差の拡大や人口減少,急激に進む高齢化等による社会保障費の増大など,地方財政を取り巻く環境はより一層厳しさを増している。
 地方公共団体が地方創生の実現に向けて施策を進めていくためには,持続可能な財政基盤の確立が不可欠であるが,脆弱な財政基盤が合併の一因となった地方公共団体においては,合併関連事業の進捗が遅れていることに加え,行政区域の広域化に対応するための財政需要は依然として高く,大きな負担となっている。
 また,東日本大震災復興需要や東京オリンピック・パラリンピック需要などにより建築資材単価が高騰していることから,老朽化した学校施設の改築や,大規模な改修の補助単価と実施単価との乖離はより深刻化し,地方自治体の負担が増加している状況である。
 他方では,東日本大震災からの復興に向けた各種事業に対する,国の財政支援が復興期間内である平成32年度をもって途切れることは,被災自治体の負担を増加させることになり,事業の進捗を停滞させることになり兼ねない。
 よって国は,次の事項について特段の措置を講じるよう要望する。

 


1 地方創生の実現に向けて,地方自治体が自主性を発揮して施策を進められるよう,合併団体等の財政需要を遺漏無く地方財政計画に反映させ,臨時財政対策債を廃止するとともに,地方交付税の増額による十分な財政措置を講じること。

2 次代を担う子ども達の安全・安心な教育環境を確保するため,公立学校施設の改築や大規模な改修に対し,実情に見合うよう補助単価を引き上げるとともに,十分な財政措置を講じること。

3 震災からの真の復興を実現するため,社会資本整備総合交付金(復興枠)などの特別な財政支援について,事業の特殊性を柔軟に考慮し,実施中の事業が完了するまで継続するとともに,当該事業期間内は,現行の交付率及び震災復興特別交付税による財政措置を継続し,現在の地方負担の水準を維持すること。


 
福島県市長会提出

復興庁後継組織の設置に関する決議

 
 国は,東日本大震災復興基本法の基本理念等に則った各種措置を主体的かつ一体的に講ずる責務を有することから,同法第24条及び復興庁設置法第21条の規定により,平成
32年度末までに限って復興庁を設置している。
 しかしながら,東日本大震災及び福島第一原子力発電所の事故から7年が経過したものの,東日本大震災復興基本法に規定された基本理念である,被災者による自発的な協働や新たな地域社会の構築に至るまでの地域社会の絆の維持及び強化には未だ至っていない。
 よって,国は,原子力災害の影響が未だ残る深刻な状況からの着実な復興を成し遂げるためには,中・長期的な対応が必要であることに鑑み,平成33年度以降も引き続き全ての関係自治体の窓口機能を担い,復興の実施主体となる国の機関を残すよう,またその在り方について早急に示すよう要望する。




山形県市長会提出

地方一般財源総額の確保に関する決議

 地方自治体は,地方創生への取組みや,子ども子育て等福祉・医療・教育の充実,公共施設等の更新・統廃合・長寿命化対策,さらには防災・減災対策など果たすべき役割が拡大し,それに必要となる財政需要は増加する一途にある。
 昨年来,地方自治体における基金の増加をもって,地方財政に余裕があるかのような議論が見られ,また,平成30年6月15日に閣議決定した『経済財政運営と改革の基本方針2018』においては,「地方自治体の基金の考え方・増減の理由・今後の方針に関し,統一的な様式での公表を促すとともに,容易に比較できるよう検討し,一覧化を目指す」など,地方財政の見える化を推進することとされている。
 先頃公表された,地方公共団体の平成29年度普通会計決算の概要においては,見える化の一環として基金等の状況も示され,それによると,特別区を除く市区町村の積立金残高は,財政調整基金が1,541億円の減,減債基金が53億円の増,その他の特定目的基金が2,991億円の増,合わせて1,503億円の増となっている。
 基金増加の要因は,公共施設の老朽化に対応するための特定目的基金の積み増しなど,各地方自治体が創意工夫により独自に歳出削減に努めながら,自らの責任と判断で取り組んできた結果であり,財政調整基金が大きく減少していることからもわかるように,地方財政を取り巻く環境は一層厳しさを増しているのが現状である。
 地方財政に余裕はなく,地方自治体のこれまで真摯に取り組んだ行財政改革や財政運営努力に水を差し,さらには地域住民との創意工夫による地方創生や地域活性化へ取組む意欲が阻害される恐れさえある議論は,断じて容認できない。
 よって,国は,地方自治体が地方創生の実現に向けて,自主性・主体性を発揮して施策を進めていくため,一般財源総額の確保に当たり,財政需要を地方財政計画に的確に反映させ,十分な財政措置を講じるとともに,基金の増加をもって地方財源の削減を行わないよう強く要望する。




宮城県市長会提出

学校施設への空調設備設置に対する財政支援に関する決議

 近年,地球温暖化に伴う記録的な猛暑が続く中,児童生徒の学びの場,生活の場である教室内の環境が著しく悪化している。特に本年は,東北地方においても,最高気温や猛暑日の日数が観測史上最高を更新した地域が多くあるなど,これまで経験したことのない猛暑となり,児童生徒が熱中症等で体調を崩すケースが増加した。
 こうした状況を改善し,児童生徒の熱中症予防や学習効果の向上を図るためには,学校施設への空調設備設置を早急に進めることが喫緊の課題となるが,空調設備の設置には多額の経費を要するとともに,設置後の維持・管理費も不可欠である。
 このような中,国は,学校への空調設備の設置について,来夏までに間に合うよう責任をもって対応するとの方針を打ち出し,文部科学省の2019年度予算の概算要求においても,「公立学校施設の安全対策・防災機能の強化等の推進」として本年度の3倍以上となる2,432億円の要求がなされ,また,一部報道によれば1,000億円超の補正予算案を臨時国会に提出する予定とされており,これらの予算枠の確実な確保が求められるところである。
 学校施設への空調設備の設置に当たっては,現在の学校施設環境改善交付金制度では,補助率が3分の1となっており,さらに,その補助単価は,実際の整備に要する経費との間に乖離があるため,自治体の財政負担が過大となっており,自治体の財政状況によっては,空調設備の設置が進まないことも懸念される。
 また,本来,公平性の観点から,すべての学校に同時期に整備することが求められるが,学校施設数の規模によっては複数年度で整備せざるを得ない場合や,将来的な更新費用,さらには,空調設備設置後のランニングコスト等の課題もあることから,自治体の状況に応じた,一過性ではない継続的な支援が必要である。
 よって,国は,児童生徒の安全確保及び学習環境の改善のため,次の事項について特段の措置を講じるよう要望する。



1 各自治体が児童生徒の学習環境を改善できるよう,空調設備の設置について,十分な予算枠を確保するとともに,補助率の引上げ等の財政措置の拡充を図ること。

2 猛暑対策は緊急の課題であることを踏まえ,今年度の補正予算により必要かつ十分な財政措置を講じること。

3 補助制度の拡充等が困難な場合は,特別交付税の選定項目を新たに設定し,確実に特別交付税措置を講じること。

4 空調設備設置後のランニングコストや,今後も必要となる設備の更新等についても,必要な財政措置を継続して講じること。




岩手県市長会提出

国際リニアコライダーの誘致実現に関する決議

 国際リニアコライダー(ILC)は,地下約100メートルに全長20キロメートルにわたり建設される世界最高・最先端の電子・陽電子衝突型加速器で,物質の根源や宇宙誕生の謎の解明に向けた実験を行うため,「世界にひとつだけ」建設される大型実験研究施設である。
 ILCは,日本の物理学の飛躍的発展が可能となるばかりでなく,国際科学技術拠点として,世界に対し日本が大きく貢献することが期待されており,国内建設地については北上高地が候補地とされている。
 国が設置した有識者会議が平成30年7月に取りまとめた報告書では,改めて科学的意義が確認された一方,巨額投資が必要なこと,国民,国内外の科学者の理解・協力の必要性が指摘された。現在は,国からの審議依頼を受けた日本学術会議が,科学的意義等についての検討を進め,年内に結論が出される見通しとなっており,国における誘致に対する判断が大詰めの段階を迎えている。
 東北地方においては加速器関連技術を用いたプロジェクトが順次計画されており,今後,関連産業の集積が進み,その集大成としてILCの建設が実現すれば,高度な技術力に基づくモノづくり産業を更に成長発展させ,東日本大震災からの創造的産業復興や日本再興に大きく寄与するものである。また,世界と地方をつなぐ先進的な地方創生,未来投資,人づくり革命という観点からも大きな役割を果たすものである。
 よって,国は,ILCの早期実現に向けて,次の事項に取り組むよう要望する。



1 ILCの国内誘致に関する方針を早期に決定し,資金の分担や研究参加に関する国際調整等をすみやかに進めること。

2 ILC実現に向けた政産官学及び地域社会での様々な取組を海外政府に情報発信すること。

3 ILCを学術のみならず,地方における産業・情報・技術の新たなネットワーク形成や地方創生推進の観点から,その活用の可能性を検討すること。