第90回全国市長会議 決議

新型コロナウイルス感染症対策に関する決議


 我が国においては、新型コロナウイルス感染症によって国民生活及び経済活動に甚大な被害が生じている。
 国は、国民の生命と健康を護るため、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法等に基づき様々な対策に取り組むとともに、補正予算を編成して機動的に経済対策及び各般の支援措置を実施している。
 我々都市自治体においては、医療提供体制の確保、小・中学校等の休業・再開、外出自粛等による地域経済の縮小など、様々な課題に直面し、対応に苦慮しつつも、独自の支援策を講じるなど、全力で対策に取り組んでいるところである。
 ついては、都市自治体において、市民が安心して暮らせる日常を取り戻すため、国は、下記事項について適切かつ弾力的な支援を講じること。



1.国と地方の緊密な連携について
 新型コロナウイルス感染症対策については、都市自治体は、市民の命と生活を守るため、国の方針等に基づき、感染予防、まん延防止、経済対策等のあらゆる対策を講じているところであるので、関係府省庁・都道府県・市町村等で緊密な連携を図ることができるよう、情報共有等について必要な措置を講じること。

2.新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の拡充について
 新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金については、地域の実情に応じてきめ細やかに必要な事業を実施するため、自由度の高いものとするとともに、地域経済を支えるための所要経費が増大していることから、総額の増額、特に地方単独事業充当分の増額を図ること。
 また、配分については、地域経済を支える団体の取組は広範多岐にわたることから、都市自治体の意見を踏まえた配分を行うこと。

3.必要な物資等の調達について
(1)マスク、アルコール消毒液等について、引き続き、生産・供給体制を整備・維持するとともに、特に医療機関や介護施設及び教育の現場等のニーズに適切に応えられるよう速やかに必要数を確保し、都市自治体に供給すること。
 また、都市自治体の必要物資調達等に要する経費については、適切な財政措置を講じること。
(2)自然災害の発生に備え、避難所等における感染防止対策等に必要な物資や資材等の供給を確保するとともに、財政措置を講じること。
(3)運輸・販売の物流や医療・介護・保育・障害等の福祉サービスの提供体制を維持できるよう必要な対策を講じること。

4.医療提供体制の確保と財政措置等の充実について
(1)医療機関が医療用マスク、アルコール消毒液、感染予防衣等の感染防具や人工呼吸器等の医療用資機材を確保できるよう安定的な供給体制を構築すること。
 また、PCR検査の充実をはじめ患者の受入れ先確保など十分な医療提供体制が維持できるよう、病院間の支援ネットワークや臨床検査技師・看護師派遣などの医療人材の確保について、国・都道府県が連携した広域的な支援体制を構築すること。
(2)医療機関において、新型コロナウイルス感染患者の受入れの増加に対応するため、必要な資機材や設備の導入及び医療従事者の増員等に要する経費について、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の増額を図るなど、十分な財政措置を講じること。
 また、病棟の一部の病床を感染患者に充てる場合であっても、院内感染を防ぐために病棟全体を感染症患者専用としており、一般患者の受入れ体制の縮小、風評被害や空床が生じること等による減収のため、病院経営が切迫した状況にあることから、十分な財政措置を講じること。
(3)重症・中等症の患者の診療はもとより、軽症患者の入院受入れや帰国者・接触外来等の運営等に対する診療報酬を更に引き上げること。
(4)受診抑制による外来患者数の減少・手術の延期等によって、公立病院の経営が圧迫されていることから、地域医療を守る公立病院の安定的経営を確保するべく、必要な財政措置を講じること。
(5)簡易検査キットや治療薬、ワクチン等の早期開発及び供給に全力で取り組み、社会的不安の解消に努めるとともに、第2波、第3波に備え、安心・安全な医療体制を構築すること。
(6)感染者や治療にあたる医療従事者やその家族、ホテル等自宅以外の療養の場及びその関係者に対する偏見や差別が起きないよう必要な対策を講じること。

5.小・中学校等の休業・再開について
(1)児童生徒の学びを保障するため、都市自治体が行うオンライン学習等による家庭学習や分散登校等の取組に対して、十分な人的・財政的支援を講じること。
(2)学校の臨時休業に伴い生じた放課後児童クラブや学校教室を活用した子どもの預かり事業に関わる市職員等の長時間勤務に伴う時間外勤務手当、保護者の利用料等の減免に伴う経費等について、十分な財政措置を講じること。
(3)保育園の保育料等について、新型コロナウイルス感染症予防のために登園を控えた保育園児等の保護者に対する支援を更に充実すること。
(4)小・中学校の修学旅行の実施の可否に関するガイドラインを示すこと。ガイドラインに基づき修学旅行を延期・中止することとした場合には、国は適切な財政措置を講じること。

6.地域経済対策について
(1)中小企業・小規模事業者、農林漁業者などへの対応
1)更なる資金繰り支援の強化と迅速な実施
 政府系金融機関等による実質無利子・無担保の特別貸付の融資枠の拡大、無利子期間の延長や保証料補助要件の緩和など、更なる資金繰り支援を強化すること。
 また、事業者の資金繰り等に重大な支障が生じることのないよう担当人員の増員による審査期間の短縮や手続きの簡素化について引き続き適切に行うこと。
 さらに、イベントの自粛要請中とその後の一定期間における既往債務については、返済猶予や融資条件変更に係る手数料の無料化など、中小企業・小規模事業者や農林漁業者等の運転資金の確保等を図ること。
2)財政支援の強化
 著しい経営困難に陥っている中小企業・小規模事業者や農林漁業者等を支援する持続化給付金については、上限額の拡充や売上要件の緩和、手続きの簡素化を行うとともに、それらに必要な予算額を確保すること。
 また、緊急事態宣言による休業要請により休業を余儀なくされた事業者に対して、十分な補償を講じること。
3)サプライチェーンを守るための企業の地方への立地促進
 建設業や製造業等において、輸入部品や資材等の調達が滞り生産体制に深刻な影響が生じていることから、国内調達が可能となるよう日本での代替生産などを行う企業等に対する支援制度を創設するとともに、積極的に地方都市への誘導を図ること。
4)経営環境の整備支援
 経営がひっ迫している中小企業・小規模事業者に対する、家賃、光熱費や社会保険料などの事業用固定費の負担軽減に係る制度を創設するとともに、不当な価格低減の要求が起こらないよう発注企業等への周知・監視体制を強化すること。
 また、生産性革命推進事業における持続化補助金等の公募期間の延長や補助率の引き上げなど、更なる見直しを図ること。
 さらに、後継者が不在のため廃業を考える事業者も増えていることから、事業承継補助金の拡充を図ること。
5)都市自治体が独自に実施した対策に係る財政措置
 事業者が融資を受ける際の初期負担軽減を図るため、都市自治体が国に先行して実施した信用保証料の助成や利子補給などの補助制度等についても国の補助対象とすること。
 また、都市自治体が独自に実施した事業者支援の施策等について、財政措置を講じること。
6)農林漁業者等への支援の拡充
 外食需要・インバウンド需要の減少等により、牛肉・牛乳・花きをはじめとする国産農林水産物の需要減退や価格下落等が顕著であることから、販売促進や需要喚起に係る支援、価格安定対策を拡充すること。
 また、労働力の確保、次期作に必要な種子・種苗、生産資材等の安定供給や情報提供、需要減退の影響が大きい畜産・酪農の事業継続の確保など、農林漁業者等が安心して生産活動などを行うことができるよう、万全の対策を講じること。
7)地域公共交通機関への支援
 利用者の減少により影響を受けている鉄道、バス、タクシーなどの地域公共交通機関については、安定経営に向けた積極的な支援を講じること。
8)外国人労働者の確保等
 実習が困難となった技能実習生等に対する雇用維持支援について、現在、一定の条件のもと、特定産業分野への再就職が可能となっているが、地域の現場の状況を踏まえ、要件の緩和等さらに柔軟な対応が可能となるよう雇用維持支援の強化を図ること。
(2)収束後における経済対策
1)消費喚起対策の実施
 売上等に甚大な打撃を被った観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント業を対象に、GoToキャンペーン事業を行うとしているが、実施に当たっては、都市自治体及び事業者等の現場の意見を踏まえ、イベント開催等に係る支援を行うとともに、風評被害対策を実施すること。
2)公共事業による景気の下支え
 地方においては、公共事業による景気の下支えが必要であることから、道路網の整備、国土強靱化など社会資本整備を強力に推進し、地域経済の活性化を図ること。

7.雇用調整助成金の拡充等について
(1)雇用調整助成金について、一層の周知を図るとともに、窓口相談体制の強化と手続きの簡素化及び速やかな交付を図ること。また、支給上限額及び助成率を更に引き上げ、生産指標要件を緩和すること。
(2)新型コロナウイルス感染症が社会にもたらす影響によって就学困難や生活困窮等に陥っている市民を支援するため、国は必要な措置を講じること。

8.地方財源の確保について
(1)令和3年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、国、地方を通じて、極めて厳しい財政状況となることが見込まれる中、社会保障関係経費など、都市自治体の行政運営に必要な財政需要については、単独事業を含め的確に地方財政計画に反映させ、地方の安定的な財政運営に必要な一般財源総額及び地方交付税総額を確保すること。
 また、恒常的な地方交付税の財源不足については、臨時財政対策債によることなく、地方交付税法定率の引上げを含めた抜本的な改革を行うこと。
(2)令和2年度の税収見通しは、感染症拡大の影響により減少することが想定され、個別の自治体ごとでも、推計基準税額と課税実績額との間に大きな乖離が生じることが想定されるため、減収補てん債の対象税目を拡大すること。


以上決議する。

令和2年6月3日

                                   全 国 市 長 会
第90回全国市長会議