第90回全国市長会議 決議

行政のデジタル化及び学校教育のICT化の推進
に関する決議


 我が国では、今後、人口減少と高齢化が深刻化していく中で生じる変化・課題に対応するとともに、大規模災害や感染症等のリスクにも的確に対応し、持続可能な行政サービスを提供していくことが求められている。
 これらに対応するため、国・地方を通じた行政手続きのデジタル化の推進や、地方自治体の情報システムの標準化、AI等の最先端技術の活用による住民の利便性向上の実現など、Society5.0 における技術の進展を最大限活用し、デジタル・ガバメントを実現することで、新たな時代にふさわしい環境を整えることが喫緊の課題である。
 一方、GIGAスクール構想については、都市自治体は、すべての児童生徒に1人1台端末環境を整備し、令和時代のスタンダードを享受できるよう、学校のICT化をさらに加速させているところである。しかし、端末・校内ネットワーク整備に係る財政負担の増加やICT教育に係る人材不足等の様々な課題に直面し、対応に苦慮している。
 よって、国においては、都市自治体における行政のデジタル化及び学校教育のICT化の推進のため、下記事項について特段の措置を講じるよう強く要請する。



1.行政のデジタル化の推進について
(1)マイナンバー制度は、公平・公正な社会保障制度や税制の基盤であるとともに、行政手続がデジタル化されることにより、国民の利便性向上や行政の効率化が実現し、特に災害時等の住民支援においては、迅速な対応が可能となることから、国民に正確な情報を提供しながら利用の促進を図ること。
 また、マイナンバー制度を円滑に進めるため、制度の安全性や信頼性について、丁寧かつ十分に説明するなど、国民への周知徹底等を図るとともに、マイナンバーカードの普及促進のための必要な措置を講じること。
(2)各都市自治体における情報システムについては、各自治体における重複投資をなくし、自治体行政のデジタル化に向けた基盤を整備する観点から、住民記録システム等、共通性の高い分野においては、国が主導の下、財政措置も含め、情報システムの標準化を推進すること。
 また、標準化された情報システムに円滑に移行できるようにすることが重要であることから、法制化も含めた推進方策について十分な検討を行う
こと。
(3)AI等を利用した行政処理システムの展開や施策については、共通性の高い業務を中心に国において実用化し、全国展開が図られるよう必要な措置を講じること。
 その際、離島や中山間地域など条件不利地域における通信基盤が確実に整備され、都市と地方の基盤整備格差が生じないよう万全の措置を講じること。
 また、地方自治体の職員のICTリテラシーの向上を図るため、IT人材の育成・確保に対する必要な支援を行うこと。

2.GIGAスクール構想の実現について
(1)ネットワーク環境整備について
1)公立小・中学校等のネットワーク環境整備については、多くの都市自治体において申請額と交付決定額が大きく乖離する状況が生じていることから、実態を精査のうえ、国の基準単価の見直しを行うこと。
2)ネットワーク環境整備を計画的に行うことができるよう、予算の繰越等、柔軟な対応を認められたいこと。
(2)端末整備について
1)公立小・中学校等の端末整備については、端末の保守、初期設定、予備端末に係る費用についても補助対象とされたいこと。
2)都市自治体が有償で購入する学習用ソフトウェアやセキュリティシステム等の導入に係る経費について財政支援を講じるとともに、国において無償の学習用ソフトウェアの充実を図ること。
(3)ICT教育人材の配置の充実等について
1)ICT支援員については、公立小・中学校等4校に1人とされている配置水準を引き上げるとともに、財政措置を拡充すること。また、地域によっては人材確保が困難であることから、国においてICT関連事業者に協力を要請する等により人材を確保すること。
2)ICT活用教育アドバイザーについては、各都道府県に1人配置するとされているが、更なる増員を図ること。
3)ICT活用に関する教員研修等に要する費用について、必要な財政措置を講じること。
(4)国と地方の連携について
1)具体的な機器や活用事例など、都市自治体がGIGAスクール構想を実現するために必要な情報を引き続き迅速かつ適切に提供すること。
2)GIGAスクール構想の実現のためには、地域の実情に応じた支援制度を構築する必要があることから、国・都道府県・市町村が緊密に意見交換できる体制を構築すること。
(5)ICT環境の維持・改善等に係る財政措置について
 児童生徒1人1台端末及びネットワーク環境の整備後における学校のICT環境の維持・改善に必要な経費については、交付・不交付団体を問わず、すべての団体において的確に対応することができるよう、国の責任において必要な財政措置を継続して講じること。
 特に、端末については、紙の教科書と同一の内容である学習者用デジタル教科書と一体となるものであり、現在、全額国費で負担している紙の教科書と同様、全額国費負担とされたいこと。


以上決議する。

令和2年6月3日

                                   全 国 市 長 会
第90回全国市長会議