第89回全国市長会議 決議

国土強靱化、防災・減災対策等の充実強化に関する決議


 我が国は、その自然条件から、地震、津波、台風、豪雨、火山噴火、豪雪、竜巻など、これまで数多くの災害に見舞われてきた。昨年においても、大阪府北部地震、平成30年7月豪雨、平成30年北海道胆振東部地震、相次ぐ台風の上陸等、様々な災害が頻発しており、住民生活に深刻な影響を及ぼしているほか、地方創生の取組等にも影を落としているところである。
 現在、被災した自治体においては災害復旧・復興に向けた取組を進めているほか、都市自治体においては、様々な防災・減災対策の充実強化に取り組んでいるが、今後、南海トラフ地震や首都直下地震等の大規模災害の発生も懸念されていることから、これらの災害による被害を可能な限り抑止し、住民の生命と財産を守り、地方創生の取組等を進めていくため、国土強靱化及び防災・減災に向けた取組をより一層進めていくことが急務となっている。
 また、東日本大震災では東京電力福島第一原子力発電所の深刻な事故が発生したところであるが、原子力災害から国民の命を守る第一義的責任は国にあることを踏まえ、国は、二度と同様の事故による被害と困難を招かないよう万全の措置を講じなければならない。
 よって、国は、国土強靱化、防災・減災対策及び被災地の復旧・復興に向けた支援、並びに原子力安全・防災対策の充実強化を図るよう、下記事項について、迅速かつ万全の措置を講じられたい。



1.国土強靱化に向けた取組の充実強化について
(1)近年頻発する自然災害にかんがみ、防災・減災及び迅速な復旧・復興に資する国土強靱化に集中的に取り組むとともに、更に充実強化すること。
(2)道路、河川、砂防、上下水道等の社会資本整備を集中的に推進するため、防災・安全交付金、社会資本整備総合交付金等を確保するなど、国土強靱化と防災・減災対策を加速するための財源を十分確保すること。
 また、事業年度が令和2年度までとされている緊急防災・減災事業債、防災・減災・国土強靱化緊急対策事業債及び緊急自然災害防止対策事業債については、引き続き防災・減災対策を充実強化させることが必要であるため、地方財政措置の拡充を図るとともに、令和3年度以降も継続的に災害対策事業を実施できるよう期限を延長すること。

2.地震・津波・火山噴火対策の充実強化について
(1)国と地方が連携して地震対策に取り組んでいくために、地域の実情を十分配慮のうえ、「国土強靭化基本計画」、「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」、「首都直下地震緊急対策推進基本計画」等の諸計画を着実に推進すること。
(2)津波対策等として、防潮堤や水門などの津波防護施設を早期に整備するとともに、既存の堤防等の耐震化等について財政措置を講じること。
(3)火山噴火による被害を最小限とするため、監視・観測体制の充実強化を図るとともに、国及び都道府県の主導による広域的な組織体制の構築や、実践的な防災対策、風評被害対策を講じること。

3.台風・集中豪雨・雪害対策の充実強化について
(1)土砂災害に備えるため、砂防関係施設の重点的な整備や気象観測体制の強化など、ハード・ソフト一体となった総合的な対策を講じるとともに、土砂災害対策の推進について十分な支援措置を講じること。
(2)河川関係施設等の整備や補修等必要な対策が迅速かつ計画的に実施できるよう十分な予算を確保すること。また、地方管理河川における維持管理について支援措置を拡充すること。
(3)計画規模を超える降雨を想定した内水浸水対策の抜本的な強化を図るとともに十分な財政措置を講じること。また、排水機場の増強、排水ポンプ車の増強などによる排水処理体制の強化措置を併せて講じること。
(4)近年の豪雨災害を踏まえ、住民の自主的な避難行動につながるよう、河川監視カメラの増設や地方自治体による適時的確な避難勧告等の発令に資する災害予測システムなど新たな技術を活用した住民の目線に立った防災情報提供方法の開発などハード・ソフト面の充実強化を図るため、大幅な予算の拡充など必要な措置を講じること。
(5)大雪時の道路交通を確保するため、都市自治体の道路除排雪経費に係る財政措置に万全を期すとともに、将来にわたり持続的に除排雪体制が確保されるよう、除雪オペレーターの確保・育成支援に取り組むこと。
 また、人口減少、高齢化の顕著な豪雪地帯における共助による雪処理の担い手確保や安全な屋根の雪下ろしの体制づくりなどを積極的に支援すること。

4.防災・減災対策の充実強化について
(1)平常時の予防対策から応急対策、復旧・復興対策を総合的に推進する広域ブロックの中核的な防災拠点となる「基幹的広域防災拠点」を、国の責任において全ブロックに早期に整備すること。
(2)災害対策の中心的施設としての機能を有する庁舎や防災拠点、避難所となる学校等公共施設等については、建替えや耐震補強、空調設備等の機能強化を図るための十分な財政措置を講じること。
 また、公共施設等適正管理推進事業債については、地域の実情に合わせた柔軟な制度とすること。
(3)大規模な災害によるブラックアウト(大規模停電)を回避するため、非常用電源や燃油供給体制の構築、電力系統の増強、さらには地域における電源の分散化など、引き続き電力供給の強靱化を図ること。

5.発災時の支援対策の充実強化について
(1)被災自治体への支援を効果的に行うため、災害救助法及び関係する諸制度において、支援物資の提供、職員派遣、避難先確保等の地方自治体間の支援に係る仕組みを確立するとともに、財政措置を拡充すること。
(2)大規模災害発生時における広域的かつ機動的な危機管理体制を確保するため、国は地方との連携強化に努めること。

6.原子力安全・防災対策の充実強化について
(1)東京電力福島第一原子力発電所事故の徹底した検証に基づき、いかなる場合においても原子力発電所の安全が確保できるよう万全の対策を講じるとともに、新規制基準に基づく適合評価について、厳格なる審査のもと、結果を分かりやすく説明すること。
 また、新規制基準については、不断の改善に取り組むこと。
(2)関係地方自治体が策定する地域防災計画及び避難計画の実効性を高めるため、都市自治体だけでは解決が困難な課題について、国・県等が連携して支援すること。さらに、原子力防災対策の拡充強化に伴う財源を確実に措置し、速やかな事業実施に配慮すること。

以上決議する。

令和元年6月12日

                                   全 国 市 長 会
第89回全国市長会議