第86回全国市長会議 決議 |
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都市税財源の充実強化に関する決議 |
今日の地方財政は、急速に進行する少子・高齢化社会に対応した福祉・医療サービスの充実や地域経済の活性化、さらには多発する自然災害に備えるための防災・減災対策など、様々な課題への対応に必要となる財政需要は増加する一途にある。 その一方で、全国の地方自治体においては、これまでも徹底した行財政改革に取り組んできたところであるが、なおも巨額の財源不足が続く極めて厳しい状況にある。 このような中、我々都市自治体が地域の実情に沿ったきめ細かな行政サービスを持続的に提供し、かつ、人口減少社会を踏まえた地方創生への取組をはじめとする新たな行政課題に的確に対応するためには、安定的な税財源の確保が不可欠である。 現在、国においては、地方税収の増加を背景に余剰財源を国の債務縮減に充てるべきとの議論がなされているところであるが、前述のとおり、地方財政は今もなお巨額の財源不足が生じており、また、地方歳出の大半は法令等により義務付けされている 経費や国の補助事業に基づく経費であり、国は、地方が標準的な行政サービスを行うために必要となる財源を国の責務として確実に保障すべきである。 よって、国においては、都市行政が国民生活のために果たしている役割とその現場の実態を十分踏まえ、都市税財源の充実強化に向け、下記事項の実現を図られるよう強く要請する。 |
記 |
1.地方税財源の充実強化 (1)地方が担う事務と責任に見合う税財源配分を基本とし、当面、税源移譲による国・地方の税源配分「5:5」の実現を図ることにより、地方の財政自主権を拡充すること。また、都市自治体が行う住民生活に直結した行政サービスの財政需要の急増と多様化に迅速かつ的確に対応できるよう、一般財源を充実確保する観点から、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系を構築すること。 (2)国・地方を通じた法人関係税収は、都市自治体の行政サービスを支えるうえで重要な財源となっており、更に法人実効税率を引き下げるに当たっては、恒久減税による減収は恒久財源で補てんすることを基本とし、地方の財政運営に支障が生じることのないよう必要な税財源措置を講じること。 (3)「社会保障・税一体改革」は、社会保障の機能強化・機能維持のための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指すものである。基礎自治体においては、既に子ども子育て等をはじめとする社会保障の充実のための施策に取り組んでいるところであり、これら施策の推進に支障が生じることのないよう、必要な財源を確保すること。また、消費税の軽減税率制度の導入に当たっては、消費税(国・地方)の引上げ分のうち地方交付税原資分も含めると、約3割が地方の社会保障財源であり、仮に減収分の全てが確保されない場合、地方の社会保障財源に影響を与えることになることから、確実に代替財源を確保すること。 (4)固定資産税は市町村財政を支える安定した基幹税であることに鑑み、償却資産に対する固定資産税については、現行制度を堅持すること。なお、平成28 年度税制改正において創設された固定資産税の時限的な特例措置については、今回限りのものとし、期間の延長は断じて行わないこと。 (5)ゴルフ場利用税については、その税収の7割が交付金としてゴルフ場所在市町村に交付されており、市町村のゴルフ場関連の財政需要に対応するとともに、特に財源に乏しい中山間地域の市町村にとっては貴重な財源となっている。また、18 歳未満、70 歳以上及び障がい者並びに国体のゴルフ競技及び学校の教育活動は非課税とするなど、生涯スポーツの実現にも十分に配慮しながら課税しており、市町村の財源確保のためにも現行制度を堅持すること。 (6)平成29年度税制改正で結論を得ることとされた車体課税の見直し、特に、自動車重量税の見直しに当たっては、その税収の4割が市町村に譲与されている現状を踏まえ、都市財政運営に支障が生じることのないよう、慎重に検討すること。 2.地方交付税の総額確保と法定率の引上げ (1)地方創生への積極的な取組をはじめ、医療・介護等の社会保障、施設の老朽化や防災・減災対策を含めた社会資本整備、地域の人口動態や行政区域の拡大等に伴う新たな対応など、都市自治体の行政運営に必要な財政需要については、単独事業を含め的確に地方財政計画に反映させ、必要な地方交付税総額を確保し、地方交付税の持つ財源調整・財源保障の両機能を強化すること。 (2)恒常的な地方交付税の財源不足については、臨時財政対策債によることなく、地方交付税の法定率の引上げ等により対応するとともに、地方の固有財源である「地方交付税」を特会直入とする「地方共有税」に変更すること。 (3)地方創生への積極的な取組を推進するため、地域の実情に応じたきめ細かな施策が実施できるよう、平成28 年度地方財政計画に計上された「まち・ひと・しごと創生事業費」の拡充を図ること。 3.財政健全化に向けた歳出改革 (1)地方歳出の大半は法令等に義務付けられた経費であることを十分に踏まえ、国の制度や法令の見直しを行わずに地方の歳出を見直すことは断じて行わないこと。特に、義務教育職員給与など地方財政法第10 条の国庫負担金については、国が義務的に支出しなければならない経費であることから、PDCAサイクルという名の下に一方的な削減は行わないこと。また、国庫支出金に対し、いわゆるパフォーマンス指標を設定してその配分に反映するようなことは行わないこと。 (2)いわゆるトップランナー方式を含む地方の歳入歳出の効率化を議論する場合は、地方の財政力や行政コストの差は、人口規模や高齢化率、経済情勢、地理的条件など、歳出削減努力以外の差によるところが大きく、一律の行政コスト比較にはなじまないことに十分留意すること。特に地方交付税の基準財政需要額については、地方自治体の標準的な水準における行政を行うために必要となる経費を反映するものであることに留意すること。 (3)都市自治体においては、更なる歳出効率化に向けて、公共施設等総合管理計画に基づく公共施設の更新・統廃合・長寿命化等に取り組んでいるところであるが、これらが円滑に進められるよう、十分な財政措置を講じること。また、統一的な基準による地方公会計の整備の促進についても、適切な財政措置を講じること。 (4)現在の市町村の教育現場は、発達障害等の特別な配慮を必要とする児童生徒が増加する等、課題が複雑かつ困難化している状況にあることから、国においては、市町村がこれらの課題に対処できるよう教職員等の人材と財源の充実確保を図ること。 特に、人口減少・少子化と厳しい財政状況の中、地方においては公教育の充実に取り組んでおり、小中学校の教職員の加配定数の増加は、そうした取組みの反映である。このような実情を勘案することなく、国の財政健全化目標の達成のために、加配定数を含む教職員定数の在り方を見直して教育費の削減を図ることは、義務教育に対する国の責任放棄であり、単に国の財政負担を地方に転嫁することになりかねないので、決して行うべきではないこと。国は教育現場を預かる地方自治体と丁寧に協議し、協調しつつ、取組みを進めること。 平成28年6月8日 全 国 市 長 会 |
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