第86回全国市長会議 決議 |
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持続可能で安定的な社会保障制度の構築に関する決議 |
我が国は、これまでどの国においても経験したことのない人口減少社会に直面しているところであり、社会保障制度の持続可能性を確保し、将来世代に確実に引き継いでいくための改革に全力で取り組むことが求められている。 このような中、政府は、社会保障の機能強化・維持のための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指すべく、「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」(平成25 年12 月)等を制定し、「社会保障・税一体改革」に取り組んでいる。 我々都市自治体は、社会保障は国との信頼・協力関係に基づき着実に推進すべきものと認識し、地域の実情に即した諸施策を実施し、懸命の努力を傾注しているところである。 よって、国は、都市自治体が社会保障の最前線において中心的役割を果たしていることにかんがみ、持続可能で安定的な社会保障制度を構築すべく、特に下記事項の実現を図られるよう強く要請する。 |
記 |
1.社会保障に係る安定財源の確保について (1)子育て支援、医療、介護等の社会保障の充実を推進し、持続可能な社会保障制度を構築するため、所要の安定財源を確実に確保すること。 既に、都市自治体においては、「社会保障・税一体改革」の一環として、子ども・子育て支援新制度をはじめとする社会保障の充実のための諸施策に取り組んでおり、これら都市自治体が実施する社会保障施策に支障が生じることのないよう、必要な財源を確保すること。 (2)都市自治体においては、国の画一的な制度では対応できないニーズを地方単独事業と組み合わせて社会保障を維持しているという実態を踏まえ、地方単独事業を含めた社会保障サービスに係る財政需要を的確に地方財政計画に反映させ、安定的な財源を確保すること。 2.国民健康保険制度について 厳しい財政運営を強いられている国保について、財政支援制度の拡充により財政基盤を強化するため、平成27 年度から実施された保険者支援金の公費拡充及び平成29年度からの後期高齢者支援金への全面総報酬割導入による更なる国費の投入を確実に継続して実施すること。 また、今後も引き続き医療費の増加が見込まれることから、国による財政支援を拡充し、更なる国保財政基盤の強化を図ること。 3.介護保険制度について (1)介護保険財政の持続的かつ安定的な運営のため、都市自治体の個々の実態を考慮しつつ、将来にわたって都市自治体の財政負担や被保険者の保険料負担が過重とならないよう、国費負担割合を引き上げること。 (2)介護人材の確保が困難を極め、労働力人口が減少していく中、安定的に介護人材を確保していくため、介護職員の処遇改善等の抜本的な対策に早急に取り組むとともに、キャリアパスの確立等の施策を強力に推進すること。 (3)社会保障・税一体改革による低所得者保険料の軽減強化のための1,400 億円は確実に確保すること。 4.子育て支援等について (1)子ども・子育て支援新制度の実施主体である都市自治体が地域のニーズに基づきサービスの質・量の改善に向けた総合的な子育て支援施策を展開することが可能となるよう、税制抜本改革以外の財源も含めて1兆円超の財源を確実に確保すること。 (2)現在、すべての都市自治体において子どもの医療費助成が行われているが、子どもの医療費助成等の地方単独事業を実施している都市自治体に対する国民健康保険の国庫負担減額調整措置については、極めて不合理な措置であることから直ちに廃止すること。また、少子化対策は我が国における喫緊の国家的課題であることに鑑み、国の責任において、子どもの医療費助成制度を創設すること。 (3)待機児童解消に向け、保育士の処遇改善等の対策を強化すること。また、すべての施設が安定的に運営できるよう公定価格を適切に設定するとともに、保育所等施設整備交付金については、十分な財政措置を講じた上で、地域の実情に応じた柔軟な運用を可能とすること。さらに、幼稚園等の認定こども園への移行を促進するため、施設の収入面での不安や新制度移行に伴う事務負担増大等の懸案事項の解消を図る措置を講じること。 (4)子ども達の将来がその家庭の事情等に左右されてしまうことがないよう、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」に基づき、教育を受ける機会の均等を図るとともに、生活の支援、保護者への就労支援等を行うことにより、子どもの貧困対策を更に総合的に推進すること。 5.生活保護制度等について (1)生活保護に係る財源負担については、生活保護が憲法に基づき、国が保障するナショナルミニマムに関わる事項であることから、本来全額国庫負担とすべきであること。 なお、それまでの間、受給世帯増加による都市自治体の負担増に対し、十分な財政措置を講じること。 (2)生活困窮者自立支援制度については、生活保護に至る前のセーフティネットとして真に実効ある制度とするため、国の責任において、事業実施に必要な人材の育成や法人・民間団体等の参入を促進するための更なる措置と併せ、制度の運営や事業の適正かつ円滑な実施に必要な情報提供等の支援措置と十分な財政支援措置を講じること。 平成28年6月8日 全 国 市 長 会 |
第86回全国市長会議 |