第86回全国市長会議 決議

地震・津波・台風等防災対策及び
原子力安全・防災対策の充実強化に関する決議


 先般発生した平成28 年熊本地震においては、多数の死者・負傷者等の人的被害のほか、家屋の損壊や住家被害により、地域住民の生活に甚大な被害をもたらした。
 我が国は、地理的条件等から、大地震、大型化する台風、頻発する集中豪雨・土砂災害、活発化する火山活動、竜巻等の突風、記録的な大雪等、数多くの災害に見舞われてきた。また、切迫性が指摘される南海トラフ地震や首都直下地震等の大規模地震の発生も懸念されており、都市自治体においては、現在、様々な防災・減災対策の充実・強化を図っているところである。これらの災害から、可能な限り被害を最小限に抑止し、国民の生命と財産を守るためには、ハード面・ソフト面の様々な防災・減災対策をより一層進めていくことが急務である。
 また、東日本大震災は、東京電力福島第一原子力発電所の深刻な事故を引き起こした。国は、二度と同様の事故による被害と困難を招かないよう原子力安全・防災対策に万全の措置を講じなければならない。
 よって、国は、地震・津波・台風等防災対策を推進するとともに、原子力発電所の安全・防災対策の充実を図るよう、下記事項について、迅速かつ万全の措置を講じられたい。



1.地震・津波・火山噴火対策の充実強化について
(1)国と地方が連携して地震対策に取り組んでいくために、地域の実情を十分配慮のうえ、「国土強靭化基本計画」、「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」、「首都直下地震緊急対策推進基本計画」等の諸計画を着実に推進すること。
(2)日本海側及び太平洋側における地震・津波に関する被害想定調査を早急に実施するとともに、地域防災計画の見直し、都道府県単位での広域防災拠点施設の整備、市町村単位での防災拠点施設の整備及びハザードマップの整備等、防災対策の推進について支援措置を講じること。
(3)津波対策等として、防潮堤等を早期整備するとともに、企業や住宅、公共施設等の移転を促進するため、土地利用の規制緩和、土地収用等の課税の特例の対象拡大など地域の実情に応じた法令整備を図ること。
(4)「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」の津波避難対策特別強化地域における防災対策推進に係る事業の所要財源を確保すること。
(5)火山噴火による被害を最小限とするため、監視・観測体制の充実強化を図るとともに、国及び都道府県が主導となった広域的な組織体制の構築や、実践的な防災対策、風評被害対策を講じること。

2.台風・集中豪雨対策の充実強化について
(1)土砂災害防止法の警戒区域における砂防施設の整備を促進すること。
(2)河川堤防の強化や河川保全区域制度の適切な運用など水害に関する防災対策の強化を推進すること。
(3)気象観測体制の充実強化を図るとともに、局地的な豪雨をより正確に予測できる予報システムを構築すること。また、特別警報の発表については、市町村単位など限定された地域で行うよう見直すこと。

3.防災・減災対策の充実強化について
(1)平常時の予防対策から応急対策、復旧・復興対策を総合的に推進する広域ブロックの中核的な防災拠点となる「基幹的広域防災拠点」を、国の責任において全ブロックに早期に整備すること。
(2)教育・文化施設等の公共施設や都市基盤施設、民間住宅等の耐震化事業等、防災・減災に係る諸事業を推進するために、財源措置を拡充・強化すること。
(3)住民の安全・安心を確保するため、消防・救急無線や防災行政無線の施設整備及びデジタル化に係る整備費用、維持管理費用等について、財政措置をさらに拡充すること。
(4)地域防災力の中核として位置付けられる消防団活動への支援として、団員処遇及び活動のための装備の改善、資機材の確保等に関わる具体的な財政上の措置を講じること。
(5)災害対策の中心的施設としての機能を有する庁舎や避難施設等については、建て替えや耐震補強を図るための十分な財政措置を講じること。
(6)平成28 年度で終了となる緊急防災・減災事業債について、継続的に災害対策事業を実施できるよう期限を延長すること。

4.発災時の支援対策の充実強化について
被災自治体への支援を効果的に行うため、災害救助法及び関係する諸制度において、支援物資の提供、職員派遣、避難先確保等の都市自治体間の支援に係る仕組みを確立するとともに、財政措置を拡充すること。

5.原子力安全・防災対策の充実強化について
(1)東京電力福島第一原子力発電所事故の徹底した検証に基づき、いかなる場合においても原子力発電所の安全が確保できるよう万全の対策を講じることにより、住民の安全確保と不安解消に努めるとともに、新規制基準に基づく適合評価について、厳格なる審査の下、結果を分かりやすく説明すること。また、新規制基準については、不断の改善に必要な科学的知見の整備・蓄積を行い、更なる高度化を図ること。
(2)関係地方公共団体が策定する地域防災計画及び避難計画については、その実効性を高めるため、都市自治体だけでは解決が困難な課題について、国・県等が連携して支援すること。さらに、原子力防災対策の拡充強化に伴う財源を確実に措置し、速やかな事業実施に配慮すること。

平成28年6月8日

                                   全 国 市 長 会
第86回全国市長会議