第83回全国市長会議 決議

社会保障制度の充実強化に関する決議

 我が国の社会保障制度は、少子高齢化、経済の長期低迷、雇用環境の変化、貧困・格差問題、世代間の不公平、さらに家族や地域のつながりの希薄化等の社会経済情勢の変化に対応するため、改革が求められている。
 社会保障の受益と負担の当事者は住民であり、改革の実施に際しては、住民と常に向き合っている都市自治体の意見を確実に反映する必要がある。
 もとより都市自治体は、社会保障は国との信頼・協力関係に基づき着実に推進すべきものと強く認識し、地域の実情に即した諸施策を実施し、懸命の努力を傾注しているところである。
 よって、国は、都市自治体が社会保障の最前線において中心的役割を果たしていることに鑑み、持続可能で安定的な社会保障制度を構築すべく、特に下記事項の実現を図られるよう強く要請する。



1.社会保障・税一体改革について
(1)社会保障制度について
社会保障制度改革国民会議の審議の結果等を踏まえ法制上の措置等を講じるに当たっては、国と地方の協議の場等において十分協議を行い、都市自治体の意見を的確に改革に反映すること。
(2)社会保障に係る安定財源の確保について
都市自治体の社会保障サービスを持続的に提供できるよう、国の画一的な制度では対応できないニーズを地方単独事業と組み合わせて社会保障を維持しているという実態を踏まえ、地方単独事業を含めた社会保障サービスに係る財政需要を的確に地方財政計画に反映させ、安定的な財源を確保すること。
(3)社会保障・税番号制度の円滑導入のための自治体支援について
@ 社会保障・税番号制度はすべての国民が対象となるものであることから、導入に当たって混乱が生じることのないよう、国は責任を持って十分な周知を行うこと。
A 社会保障・税番号制度の導入や運営等に関し、都市自治体に対し新たに生じる費用については、そのすべてについて国において万全の財政措置を講じること。
B 社会保障・税番号制度の円滑な導入と安定した運用のため、システムの仕様やマニュアル等を早期に地方公共団体に示すこと。
 併せて、新制度導入に伴い必要となる既存システムの改修等についても支障が生じないよう、必要な情報等を提供すること。

2.国民健康保険制度について
(1)社会保障制度改革国民会議においては、医療計画の策定者である都道府県を国保の保険者とする方向で検討していくこととしている。国民会議の方向性を尊重し、国保の構造的問題の解決や財政基盤の強化を図り、持続可能な制度として、施行時期を明確にしたうえで、早急に都道府県を保険者とし、市町村との適切な役割分担のもと、国保制度の再編・統合を行うこと。
 あわせて、将来的には、すべての国民を対象とする医療保険制度の一本化に向け、抜本改革を実施すること。
(2)国保は、被用者保険からの退職者等、前期高齢者の大半を受け入れているため、財政的な構造問題を多く抱えている。その解決に向けて、社会保障制度改革国民会議において提案されている後期高齢者支援金への総報酬割の拡大等、新たな制度の見直しによって生じる財源については、国保への支援対策として活用すべきであること。
(3)社会保障・税一体改革による保険者支援制度の拡充及び低所得者保険料軽減の拡大等の財政基盤強化策として必要な 2,200 億円を確保し、平成 26 年度の消費税率8%への引上げ時に確実に実施すること。

3.地域医療体制の充実について
医師や看護師等の不足、地域間・診療科間等の偏在を解消し、安心で質の高い医療サービスを安定的に提供するため、医師・看護師等の絶対数を確保するとともに、必要な財源を確保すること。

4.介護保険制度について
(1)介護保険財政の健全な運営のため、都市自治体の個々の実態を考慮しつつ、将来にわたって都市自治体の財政負担が過重とならないよう、国費負担割合を引き上げること。
(2)低所得者に対する介護保険料や利用料の軽減策については、国の責任において、財政措置を含め総合的かつ統一的な対策を講じるよう、抜本的な見直しを行うこと。
(3)特に、社会保障・税一体改革による第1号保険料の低所得者保険料軽減強化策として必要な 1,300 億円を確実に確保すること。

5.子ども・子育て支援新制度等について
(1)子ども・子育て支援新制度の実施主体である都市自治体が地域のニーズに基づき総合的な子育て支援施策を展開することが可能となるよう、税制抜本改革以外の財源も含めて1兆円超の財源を確実に確保すること。
(2)新制度の本格施行に向け、その詳細を検討するに当たっては、都市自治体と丁寧に協議を行い、その意見を十分反映させること。
(3)待機児童解消について、都市自治体の実情に応じた取組みを推進するため、先般示された「待機児童解消加速化プラン」を早期に具体化するとともに、所要の財源を確保すること。

6.生活保護制度等について
(1)生活保護制度の見直しについては、受給者が増加し続けている都市自治体の危機的状況に対処し、必要な人には確実に保護を実施するという基本的な考え方を維持しつつ、今後とも制度が国民の信頼に応えることができるよう、必要な法整備を行い、就労による自立の促進、不正受給対策の強化、医療扶助の適正化等を実施するための所要の措置を講じること。
 また、最後のセーフティネットとして持続可能な制度とするため、今後も都市自治体と協議し、その意見を制度に反映すること。
(2)生活困窮者自立支援制度を円滑に運営するためには、相当の財源とマンパワーを要することや、関係機関の機能と役割の整理が必要であること等から、本格施行に向けた詳細の検討に当たっては、都市自治体をはじめ、現場を担う社会福祉協議会や社会福祉法人、NPO等の関係者と丁寧に協議を行い、その意見を十分反映すること。
 また、制度を円滑に施行し、生活困窮者が必要な支援を受けることができるよう、国民や都市自治体等の関係者に対し、十分な周知を図ること。
(3)生活保護に係る財源負担については、生活保護が憲法に基づき、国が保障するナショナルミニマムに関わる事項であることから、本来全額国庫負担とすべきであること。
 なお、それまでの間、急激な受給世帯増加による都市自治体の負担増に対し、十分な財政措置を講じること。

以上決議する。

平成 25 年6月5日

第83回全国市長会議