岩手県市長会提出
東日本大震災からの早期復旧・復興の実現に関する決議
東日本大震災から9年が経過し、それぞれの被災自治体は復興に向けた懸命の取組を続けているが、復旧・復興の段階に応じた種々の課題に引き続き直面しており、地域の実情に応じた被災者の生活再建や地域の復興を完遂させる取組を強力に推進するためには、復興財源の確保はもとより、予算制度の拡充や強化、柔軟な運用等が必要である。
よって、国は、被災自治体の実情を考慮し、東日本大震災からの復興完遂に向けて、次の事項について特段の措置を講じるよう要望する。
記
1 復興道路等の整備促進について
東日本大震災では、三陸縦貫自動車道等の高規格道路は損傷が少なく、地域の避難道路や救援物資の輸送路として機能し、「命の道」の役割を果たした。また、内陸部と沿岸部を結ぶ東北横断自動車道釜石秋田線、国道106号、国道281号、国道340号及び国道343号等の横断道路は、自衛隊・警察・消防などの迅速な救助活動、内陸部からの緊急物資の輸送など、復旧の支援道路として重要な役割を果たした。
一方で、令和元年10月に発生した台風19号では、国道45号のトンネル崩落等をはじめ、各地で通行止めが発生し、沿線住民に甚大な影響を及ぼした。
今後、被災自治体が、医療・防災面など地域の安全・安心な暮らしが営めるまちづくり、各産業の復興、三陸ジオパークを中心とした観光振興、地域活性化の実現、当面中止中の宮古~室蘭フェリー航路の早期再開等を進めるためには、道路整備促進による「ストック効果」が必要不可欠であることから、高速交通網を主軸とした縦貫軸と横断軸の地域間を一体的に結ぶ道路整備の早期全線開通に向け、次の事項について要望する。
(1)復興のリーディングプロジェクトである「三陸沿岸道路」、「宮古盛岡横断道路」及び復興関連道路を早期に全線開通すること。
(2)「国道340号押角トンネル」等の社会資本の整備を着実に実施するための必要な公共事業費を確保すること。
(3)復興支援道路に位置付けられている、県都盛岡市と県北沿岸地域を結ぶ国道281号の改良整備を促進し、県内90分構想の実現に向け早期事業化を図ること。
(4)「宮古盛岡横断道路」の「直轄による権限代行実施の検討を行うための調査」箇所2地区のうち、「田鎖蟇目道路」が新規事業箇所に決定されたことから、早期完成に向け必要な公共事業費を確保すること。また、残る1地区(箱石-達曽部間)についても、国による調査促進を図るとともに、計画路線全体にわたる高規格化を図り、災害に強い「命の道」を国により整備すること。
2 港湾の整備促進について
東日本大震災では、大津波により、国家石油備蓄基地の地上施設のほか、臨海部の漁港施設、主要企業、観光施設等が壊滅的な被害を受け、その早期の復旧・復興に全力を傾注してきたところであるが、市民の生命や財産を自然災害の脅威から守るためには、「命の砦」である湾口防波堤の一日も早い完成が求められるところである。
港湾は、景気浮揚、雇用確保、環境問題への対応など、住民生活や産業振興を支える大変重要な社会基盤であるとともに、地域の経済活動においても重要な拠点であり、被災地域の復興を効率的に進めるうえでも、その整備が必要不可欠である。
よって、令和10年度完成を目指している久慈港湾口防波堤の確実な予算確保と着実な整備促進を図ること。
3 復興事業により整備した水門等の維持管理に係る財政支援について
東日本大震災の被災地域では、復興事業で整備した多くの防災基盤の維持管理費が大きな負担となっている。特にも、今次災害において多くの消防団員らが犠牲となった経験から県内統一で遠隔自動化した水門や陸閘及び適切な避難行動を誘導するための避難路の維持管理費について、震災後の新たな財政負担となり、被災自治体の財政を圧迫している。
よって、国は、こうした被災自治体の財政事情を考慮し、水門や陸閘及び避難路の維持管理費に関する交付税措置などの財政支援措置など対応策を講じること。
4 災害援護資金制度の申請期限延長について
東日本大震災の被災者が利用できる災害援護資金制度は、被災者の住宅再建や生活基盤の再構築に寄与するとともに、復興まちづくりの円滑かつ迅速な推進に大きく貢献しているが、その申請期限は令和3年3月31日となっている。借用事由の多くは、復興公営住宅入居時の家財購入や住宅建築に要する費用など、自力再建に関するものであり、今後も被災者の復興にあたり、本制度を必要としているものであることから、被災者一人ひとりに対して支援の手がきめ細かに行き届き、自立した生活を安心して送るため、災害援護支援金制度の申請期限を延長すること。
5 家賃低廉化事業・特別家賃低減事業の着実な継続について
災害公営住宅の家賃軽減に活用してきた「災害公営住宅家賃低廉化事業」及び「東日本大震災特別家賃低減事業」は、復興・創生期間後において支援水準の見直しを行うとしているが、被災者および被災地支援のため、今後においても補助額や補助期間を減じることなく、事業を着実に継続すること。
6 復興計画に基づく再生可能エネルギーの導入促進について
被災自治体の多くでは、東日本大震災による長期停電などに伴い初期の被災者支援活動や災害応急対応に多大な障害が生じたことを教訓として、復興計画において再生可能エネルギーの導入推進を重点施策に掲げ取り組んでいるが、再生可能エネルギー発電設備の急増に伴い、送電設備の容量不足による連携制約などの問題が生じている。
この対策として、再生可能エネルギーの連携可能量を拡大するため、緊急時用の送電線の活用を一定の条件下で連携を認める「日本版コネクト&マネージ」を早急に推進する必要がある。
再生可能エネルギーの連携可能量の拡大は、国が進める再生可能エネルギーの主力電源化に向けた施策にも合致することから、次の事項について要望する。
(1)再生可能エネルギーのより一層の拡大に向けて、国の主導により送電網の積極的な増強策を進めること。
(2)再生可能エネルギー導入及びエネルギーの地産地消などに取り組む自治体を支援する施策の一層の充実を図ること。
(3)再生可能エネルギーの連携可能量を拡大するため、「日本版コネクト&マネージ」を早急に推進すること。
7 東京電力福島第一原子力発電所事故による放射性物質汚染対策について
東京電力福島第一原子力発電所事故に起因する放射性物質による汚染は広範囲に及んでおり、市民の安全・安心を脅かし、生産活動にも極めて大きな影響を与えている。
また、山菜・野生きのこ類の出荷制限解除の目途が立たない中、農山村に暮らす人々の生活は大きな影響を受けており、産地直売関係者も主力となる商品が販売できない状況が続いているため、大きな打撃を受けている。
事故発生以来9年以上にわたり、農林産物等の放射性物質検査、汚染された農林業系廃棄物対策などを積極的に推進してきたところであるが、更なる対策の強化と継続が必要である。
また、原木しいたけ産地の再生には、安全な原木の確保とほだ場の落葉層除去が不可欠な取組であり、今後も継続して実施する必要があるほか、除去作業によって生じた落葉層については、国から最終処分方法が示されていないため、一時保管を余儀なくされていることから、次の事項について要望する。
(1)農林業系汚染廃棄物の適切な処理加速化事業をその処理が終了まで継続するとともに、農林業系汚染廃棄物の適切な処理の促進と最終処分までの適切な保管を継続するため、現場の実態に応じて財政的・技術的支援を継続すること。
(2)次の事項について、東京電力ホールディングス株式会社に対し指導を強化すること。
・ 原発事故の原因者としての責任を自覚した上で、山菜・野生きのこ類の出荷制限による損害を受けた産直団体や、根拠書類を提出できないために損害賠償請求できずにいる産直組織等が行う請求事務の簡素化等により、生産者の負担にならない賠償請求事務が行えるよう強く指導すること。
・ 地元産原木が利用できないことにより生じた原木購入費の掛り増しについて、新規参入者と規模拡大意向者への賠償実現に向け強く指導すること。
・ 立木等に係る福島県と同様の財物賠償実現に向け強く指導すること。
・ 市町村からの賠償請求に対し、迅速に支払いに応じるよう強く指導すること。
(3)ほだ場の落葉層除去によって発生した落葉層の最終処分方法を早期に提示し、その処理に関する全面的な支援を行うこと。
8 政府主催の東日本大震災追悼式の継続について
これまで、東日本大震災追悼式は、未曽有の大災害による多くの犠牲者を国として追悼し、また、被災者に寄り添う気持ちを将来にわたって持ち続ける意思を表す役割を果た してきた。
このたび、国は、政府主催の追悼式について、発災から10年となる2021年までとする方針を示したが、被災者の心の復興には時間が必要であり、10年を区切りとすることは被災者の心情に合わないと考える。
よって、復興創生期間後においても、被災地域に整備される国営の追悼・祈念施設等を活用して、引き続き政府主催の追悼式を開催すること。
宮城県市長会提出
東日本大震災からの復旧・復興に関する決議
東日本大震災から8年が経過したが、それぞれの被災自治体では、まだまだ復旧・復興の段階に応じた種々の課題に直面している。
被災自治体において地域の実情に応じた被災者の生活再建や地域の復興に向けた取組みを一層加速していくためには、復興財源の確保はもとより、予算制度の拡充・強化、柔軟な運用等、更なる取組みが必要である。
よって、国は、被災地の一日も早い復旧・復興が実現されるよう、次の事項について特段の措置を講じるよう要望する。
記
1.復旧・復興事業の実態に即した財政支援等について
(1) 震災からの復興を成し遂げるために必要な事業について、今後とも復興の進捗に応じ、財源を確実に措置すること。また、復興事業の加速化を進めているところであるが、今後はハード事業に加え、コミュニティの再生など新たなまちづくりの諸課題への対応が重要となることから、被災規模や地域の実情に応じた復興まちづくりを実現するため、復興交付金の柔軟な運用を図るとともに、災害復旧事業並びに震災復興事業に係る震災復興特別交付税等の地方財政措置について、復興事業が完了するまでの間、継続的な措置を講ずること。
(2) 復興事業の実施にあたり、震災記憶の風化及び他地域での災害等の影響から、各支援自治体では人員派遣が困難となる状況が見受けられることから、復興を遂げるまでの間、被災市町村への職員派遣について必要な措置を講じること。また、被災地で勤務する職員及び元派遣職員を含めた派遣職員に対するメンタルヘルス対策は極めて重要であることから、平成28年度から実施されている「東日本大震災に関連するメンタルヘルス対策5か年事業」については、被災自治体の要望も踏まえつつ、5年間同様の措置で継続すること。
(3) 災害援護資金の貸付は、所得が一定額に満たない世帯の世帯主を対象としている制度であることから、震災から期間が経過した現在においても依然として生活困窮の状況から抜け出せず約定による償還が困難な者が存在している状況である。よって、国は、自治体が、災害援護資金の支払猶予を適用し、借受人の償還期間を延長した場合には、自治体の国に対する償還期間を延長すること。また、災害弔慰金の支給等に関する法律等に規定されている償還免除について、自治体と協議の上、具体的な基準を明示すること。併せて、債権回収に向けた自治体個々の取組みに係る経費について助成を行うとともに、国において債権回収機構等を設置し、専門的かつ専属的に債権回収を実施すること。
(4) 復興特区法に基づく、地方税の課税免除等を行った自治体に対する減収補てん措置について、復興・創生期間終了後に生じる減収分も含め、これまでと同様の措置を継続すること。また、令和2年度末までとされている復興特区における税制上の特例措置の期限を、令和3年度以降についても延長すること。
2.被災者の生活再建支援等について
(1) 震災以降の心のケアが必要な児童生徒に対して、よりきめ細かな教育を実現し、豊かな教育環境を整備するため、小中学校全学年の35人以下学級早期実現など弾力的な学級編制が可能となるよう、加配教員の継続した配置及び教育復興加配終了後の特段の措置を図ること。
(2) 震災によるPTSDを抱える児童・生徒への対応等について、長期的な支援が必要不可欠であることから養護教諭や就学援助の増加等に対応する事務職員も含めた加配の充実を図ること。
(3) 被災児童生徒就学支援等事業について、今後も令和2年以降全額国費による支援を継続すること。
(4) 被災者の孤立防止のための地域での見守りやコミュニティの活性化、心のケアを含む健康支援等の各種支援施策を被災自治体や被災者支援団体等が継続的、安定的に実施できるよう、被災者支援総合交付金の交付期間の延長またはそれに変わる補助金等の新設等、必要かつ十分な財政支援を長期的に行うこと。
(5) 被災者生活再建支援金について、津波により住家全体が流失・滅失した場合の支援拡充や宅地被害に対する支援の必要性など、さまざまな課題が明らかとなったことから、総合的な制度の見直しを図ること。
3.地域産業の復興・再生及び公共施設等の復旧支援について
津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金について、交付申請期間及び運用期間の再延長を行うこと。また、事業完了期限などの課題が生じた場合には、さらなる再延長を含め、復興の状況を踏まえた柔軟な措置を行うこと。(要望取り下げ)
(1) 中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業について、今後も令和2年度まで制度を継続するとともに、従前地以外の場所に仮復旧を行うなど、段階的な復旧を行った事業者には、その補助対象枠を拡大するなど柔軟な制度運用を行うこと。
(2) 農業集落排水事業の廃止に係る農業集落排水施設の撤去及び充填処理等を国費で対応するとともに、廃止に伴い滅失を行う施設について残存する債務の償還を免除する制度の創設を検討すること。
(3) 震災以後、大雨時に仙塩流域下水道管内市町において、地盤沈下や地下水位の変動などに起因していると考えられる公共下水道(汚水)マンホールからの溢水が見受けられ、公衆衛生や市民の健康への影響が懸念されていることから、早急な対応、解決のため必要かつ十分な財政支援を講じること。
4.原発事故に対する対応について
(1) 放射性物質で汚染された廃棄物や土壌、焼却灰等の管理・中間処理・最終処分などの処理のプロセスや仮置場・長期管理施設の設置等について、国が主体的に責任を持って住民に説明するとともに、基準を超える廃棄物の処理及び必要な施設の管理について、国が迅速に責任をもって対応すること。また、8,000Bq/kg以下の一般廃棄物扱いとなる汚染廃棄物について、市町村が処理に取組む場合は、国は柔軟な対応と十分な負担を行うこと。
(2) 除染事業により発生した除染廃棄物や除去土壌の処分については、住民の強い不安感、拒絶感により進まない状況であることから、国が主体的に責任を持って説明するとともに、財政的、技術的支援に止まらず、国の責任において処分すること。
(3) 汚染状況重点調査地域に指定され、除染対象とされた区域から生じた除去土壌の処分基準を定める省令の早期策定を求めるとともに、その処分先の確保について、国が主体的に責任を持って対応すること。
(4) 親水空間として多くの市民が利用している河川等の除染対策の方針を早急に示すとともに、適切な措置が講じられるまでは、測定ポイントを河川毎に適切に選定の上、空間放射線量の測定を継続的に実施し公表する等、十分な情報提供を行うこと。
(5) 福島第一原子力発電所の汚染水対策について、平成25年9月に国が前面に出て汚染水対策を実行していくという基本方針を発表しているが、その後も流出が疑われる事態が判明していることから、国が主体的に取り組み、実効性のある地下水対策、汚染水流出阻止及び風評被害防止に関する措置を速やかに実施すること。
(6) 放射線による健康影響調査について、国の責任と判断において、調査実施の必要性や対応方針に関する明確な基準を早急に示し、必要があると認められた場合は、国の責任において調査を実施すること。
(7) 原発事故に起因する農林畜産物、水産物に係る風評被害対策を講じるとともに、東京電力に対し損害賠償の拡大及び早期支払を指導すること。また、観光業の風評被害について、宮城県内の観光業に対する影響を正しく認識し、福島県と同様の内容で損害賠償するとともに、東京電力に対しては、東北以外の地域からの観光客入込みに限った損害賠償対象を拡大し、震災後わずか1年間とした対象期間を将来にわたって認めるよう指導すること。
(8) イノシシ被害が年々拡大し、イノシシ自体が生息域を広げながら繁殖を続けている状況下においては、単一の市町村だけでの対策では限界があることから、国・県が主体となり、広域的な対策(駆除、防除及び処分等)を行うこと。さらに、本年度、東北農政局主催の鳥獣被害対策会議が被害の大きい県南地域で開催されるなど、新たな取組が始まろうとしているが、このような広域連携等による対策が図られるような取組みを積極的に行うこと。
(9) 30km圏外の地域に対する原子力防災対策の基準や対策の具体的内容を早急に明らかにするとともに、対策実施段階での具体的な手順や方法を提示し、対策に要する費用について十分な財政措置を講じること。特にモニタリングポストの設置等、防護対策のための資機材の整備・維持管理に係る財源措置を講じること。
福島県市長会提出
東日本大震災からの復興に関する決議
東日本大震災から9年が経過し、被災した自治体が懸命の取組を続ける中、それぞれの自治体は、復旧・復興に応じた種々の課題に引き続き直面している。
国においては、令和元年12月に「『復興・創生期間』後における復興の基本方針」を閣議決定したところであるが、被災自治体において地域の実情に応じた被災者の生活再建や地域の復興に向けた取組を継続していくためには、復興財源の確保はもとより、復興事業に係る専門的知識を有する人材の確保、予算制度の拡充・強化、柔軟な運用等の取組が必要である。
よって、国は、被災自治体が東日本大震災からの復旧・復興を主体的かつ早期に実現できるよう、次の事項について特段の措置を講じるよう要望する。
記
1 復旧・復興事業の実態に即した財政支援等について
(1) 復興・創生期間後における財政支援については、「地震・津波被災地域」「原子力災害被災地域」を区分して、支援期間や対象地域を一律に設定するのではなく、地域の実情を勘案し、被災地が必要と考える取組を幅広に対象とするような新たな交付金制度の構築を図ること。
(2) 復興交付金について、防集移転元地の具体的利用計画がない段階においても利活用に際し必ず必要となる最小限の基盤整備にも活用できるよう柔軟に対応すること。
(3) 災害援護資金の貸付は、所得が一定に満たない世帯の世帯主を対象としている制度であることから、震災から期間が経過した現在においても依然として生活困窮の状況から抜け出せず約定による償還が困難な者が存在している状況である。よって、国は、自治体が災害援護資金の支払猶予を適用し、借受人の償還期間を延長した場合には、自治体の国に対する償還期間を延長すること。
また、災害弔慰金の支給等に関する法律等に規定されている償還免除について、破産手続きが開始されたものに対する償還免除など一部免除要件が緩和されたものの、強制執行を行い回収できない場合においても免除の対象にならないなど、実態を踏まえれば不十分であることから、地方自治法による徴収停止や、地方税法による滞納処分の執行停止に合致するような、回収困難な案件については償還免除にできるよう免除要件を改めること。
併せて、債権回収に向けた自治体個々の取組に係る経費について助成を行うとともに、国おいて債権回収機構等を設置し、専門的かつ専属的に債権回収を実施すること。
2 被災者の生活再建支援等について
(1) 東日本大震災特別家賃低減事業について、建物管理開始後6年目以降は災害公営住宅の入居者の家賃の負担割合が段階的に増え、国の補助額は低減することとなっているが、収入の増加の見込めない高齢者世帯など、入居者の状況に応じ自治体独自に減免を行った場合において財政措置を講じるとともに、事業期間を延長し、自治体が11年目以降も減免を行う場合には同様の措置を講じること。
また、復興・創生期間後において、災害公営住宅家賃低廉化事業及び東日本大震災特別家賃低減事業について、少なくとも現状の制度を堅持し、継続すること。
(2) 東日本大震災等の影響による医療費の増加は、今後も続くことが想定されることから、医療費増加に伴う負担増分として財政支援を継続すること。
(3) 津波により広域かつ甚大な被害を受けた沿岸地域において、全壊家屋の再建等に対し最大 300万円を支給する被災者生活再建支援制度があるものの、被災者の中には高齢者や生活困窮者など自宅再建が困難な方もいることや半壊家屋については対象外となっていることがあり、住宅の再建状況が依然として低い状況にある。このため、被災者が自らの望む生活再建を果たせるよう、被災者の生活状況や被災地の実態等を踏まえ、被災者生活再建支援制度の総合的な見直しを図ること。
3 公共施設等の復旧支援について
(1) 復興道路・復興支援道路の供用までには期間を要することから、事業を確実に実施すること。
また、東北中央自動車道相馬・福島道路については、相双地域から福島県立医科大学付属病院への搬送時間を大幅に短縮するなど、福島復興に大きく貢献することが期待されているが、国道13号福島西道路の南伸により、その搬送時間はさらに大きく短縮することが期待され、災害時の代替路を確保できる効果や物流の向上による産業復興も期待できることから、福島西道路の南伸事業を復興に不可欠なものとして、確実に実施すること。
(2) 国は復興道路・復興支援道路の緊急整備など被災地域の早期復旧・復興に全力で取り組むとしているが、避難者の生活支援など被災地域の確実な復興再生を図るためには、更なる幹線道路網の充実強化や地域の復興に寄与する道路整備を促進する必要があることから、重要物流道路について、平常時・災害時を問わない安定的な輸送を確保できるよう、指定された道路の機能強化や整備に重点支援を行うとともに、災害時の拠点施設等とを連結する県道や市道などの基幹道路や、地域の骨格となる事業中・計画中の路線を確実に指定すること。
(3) 津波被災地である浜通りの復興加速化を図るため、福島県が戦略的に取り組んでいる国道399号、県道小野富岡線、県道吉間田滝根線、小名浜道路等の浜通りと中通りを結ぶふくしま復興再生道路の整備促進を図ること。
(4) 復興を加速化させていくため、JR常磐線の利便性向上は必須であることから、東日本旅客鉄道株式会社と連携し、特急列車について、福島県浜通り地方からの早朝出発便や東京からの夜間到着便の設定及び増便を図るとともに、普通列車の増便や福島県浜通り地方と仙台を結ぶ快速列車の運行など、利便性の向上を図ること。また、線形改良や道路との立体交差等による高速化などの基盤強化を図ること。
(5) 東日本大震災により沿岸部においては地盤沈下が発生し、広範囲にわたって浸水したことから、住民の生活基盤再建のため、雨水排水のためのポンプ場をはじめ震災対応に不可欠な施設を整備したところであるが、これら施設の維持管理費について、基準財政需要額に算入し交付税措置を講じること。
また、これら施設は恒久的に活用するものであり、将来老朽化に伴う更新費用も必要となるため、改築・更新に対する財政支援についても今後検討すること。
福島県市長会提出
東京電力福島第一原子力発電所事故への対応に関する決議
東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、令和2年3月現在で、福島県民だけでも3万8千人余もの方々が避難を余儀なくされている。
東京電力福島第一原子力発電所事故は、放射線被ばくによる健康被害への不安、風評による観光客の激減など様々な影響を及ぼしている。
よって、国は、原発事故の早期収束へ向け、自らの責任のもと着実な取組を強力に推進するとともに、正確な情報の迅速な公表に努め、次の事項について、特段の措置を講じるよう要望する。
記
1 復興・創生期間後の復興の体制について
「『復興・創生期間』後における東日本大震災からの復興の基本方針」(令和元年12月20日閣議決定)において、復興庁設置期間の10年間延長、復興大臣の設置、現行の総合調整機能を維持すること等が盛り込まれたが、復興・創生期間後においても、切れ目なく安心感を持って復興を進めることができるよう、十分な体制及び復興の進度に応じた柔軟な制度を講じるとともに、今後新たに顕在化する課題に対しても引き続き国が前面に立って取り組むこと。
2 原子力発電所事故に関する対応への財政支援等について
(1) 「「復興・創生期間」後における東日本大震災からの復興の基本方針」において、被災者支援、産業・生業の再生及び風評払拭などの継続した支援の方向性が示されたが、復興・創生期間後も、ふくしま復興に関する特段の対策が必要であり、その計画的な推進を図るためにも、財政支援の枠組みを早期に示すとともに、風評・偏見の解消とそれに対する心の復興に関する対策を講じるなど被災市町村の状況に即した切れ目のない財政支援について、避難指示が出された区域以外も含めて特段の措置を講じること。
(2) 復興・創生期間において放射能災害として実施する除染・放射線のモニタリング、健康管理、食品の放射線量測定、風評被害対策など、原発事故由来の事業については、復興・創生期間後も長期に及ぶことが予想されるため、全額国費による財政措置を長期的に継続すること。
(3) 子どもを健やかに生み育てるために行っている個人積算線量計の配布や給食の線量検査、屋内遊び場の運営等の財源である福島再生加速化交付金及び被災者支援総合交付金を継続するとともに、十分な財政措置を講じること。
また、避難指示区域及び旧緊急時避難準備区域12市町村から多くの避難者を受け入れている周辺地域においては、共に復興に向けて取り組んでいるところであり、一日も早い復興・再生を成し遂げるため、福島再生加速化交付金事業のうち当該12市町村のみが対象となっている事業について、浜通り全体で活用できるよう対象地域の拡充を図ること。
(4) 原発事故に伴う固定資産税等の減収分の全額について、財政措置を講じること。
(5) 避難指示区域等からの長期避難者の住民票の取扱いについて、税負担の公平性はもとより、地方自治制度の根幹に関わる課題であり、避難者への適切な行政サービス提供や避難者と受入れ自治体住民の交流促進、地域コミュニティの確立の観点、さらに住民意向調査では帰還する意思のない避難者もいることなどから、見直すこと。
(6) 全国避難者情報システムに基づく避難者登録制度について、避難の終了や変更が生じているものの、避難者からその旨の届出がないことで、避難者名簿が正確性を欠き、居住実態が把握できない世帯が多い状況では、避難先・避難元の自治体が行っている避難者への支援に支障が生じることとなるため、避難の実態を十分に把握できるよう、必要な見直しを図り、実効性を確保すること。
3 放射性物質の除染対策について
(1) 中間貯蔵施設の早期完成に努めること。
また、中間貯蔵施設への輸送の早期完了に向け各自治体の要望に対して柔軟な対応に努めること。
また、除去土壌等の適正管理・搬出、積込場の整備、仮置場の原状回復などについて、地域の実情に即した柔軟な対応とそれに伴う安定的な財政措置を講じること。
(2) 福島県内においては、8,000Bq/kgを超え100,000Bq/kg以下の飛灰等を埋立処理する特定廃棄物セメント固型化施設への輸送スケジュールを厳守し、早期に輸送を完了させるとともに、100,000Bq/kgを超える指定廃棄物について、処理のスケジュールを早期に示すこと。
(3) 住宅地から20m以上離れた森林など除染の枠組から外れた箇所等で、人への健康影響等が懸念されると思われる箇所が判明した場合は、リスクコミュニケーションによる不安解消や線量低減化をはじめとした環境回復措置について、継続した支援策を講じること。
(4) 除染の進捗や中間貯蔵施設への安全かつ円滑な輸送のため重要となる県内の基幹的な道路の整備、特に、常磐自動車道の早期全線4車線化、国道6号の南相馬市内一部4車線化、相馬福島道路の早期完成のため、十分な整備予算を確保するとともに、原子力災害からの復興・再生、避難住民の帰還を加速させるため、(仮称)小高スマートインターチェンジの早期整備を支援すること。
また、汚染土壌の中間貯蔵施設への輸送による更なる道路の破損等が懸念されることから、道路の拡幅及び路面破損時の修繕等を併せた仮置き場からのアクセス道路の環境整備について、現場の実情に即した柔軟な対応とそれに伴う安定的な財政措置を講じること。
(5) 除染等業務従事者等被ばく線量登録管理制度は、除染等事業者等が事業に携わる業務従事者の被ばく線量について、一人ひとりの累積被ばく線量等を確実に把握できる制度で、登録することにより被ばく線量等を散逸することなく長期間保管することが可能になるが、当該制度開始前に業務が完了していた事業については、累積被ばく線量等を確認できない状況となっていることから、当該制度について、運用開始前後にかかわらず、全ての除染等事業者が速やかに登録するよう、国が主体となり、周知、広報等を図り、制度の充実を図ること。
4 廃炉・汚染水対策について
(1) 廃炉対策について、平成25年9月に国が前面に出て汚染水対策を実行していくという基本方針を発表しているが、その後も流出が疑われる事態が判明していることから、事業者に任せることなく国が前面に立ち、具体的工程を示すとともに、国内外からの英知を結集し、燃料デブリの取り出しを含め、安全かつ確実に完遂すること。
(2) 汚染水対策について、国が主体的に取り組み、実効性のある地下水対策、汚染水流出阻止対策及び正確で迅速な情報発信など風評被害防止に関する措置を可及的速やかに実施すること。
5 放射能教育について
国民の間で放射能に関する理解が進んでいないことから、高等学校の入学試験や国が関わる試験に放射能に関する設問を検討するなど、子どもから大人まで幅広い年齢層が放射能に関する正しい知識を習得するとともに、これに基づき適切に行動する能力の向上を図るためのあらゆる施策を国を挙げて取り組むこと。
さらに、国内外に対し、福島県の現状に関する正しい情報を発信し、風評を払拭すること。
6 食品の安全確保対策への支援について
(1) 風評被害対策として、国内外に向けた福島県産農林水産物の安全性をPRする広報活動を国の主導により展開すること。
(2) モニタリング体制の維持・充実と併せ、地域の安全性に係る正確な情報を積極的に発信するとともに、福島県で生産された農林水産物のPRへの支援など、地域と連携した取組を推進すること。
特に、漁業の風評被害が深刻であることから、その対策として、地産地消を目的に安全安心な魚介類をアピールするため、クルーズ船の誘致やそれらを食するイベント等を行うことに対する支援策を講じること。
7 原子力発電所事故に伴う損害賠償の適正な実施及び迅速化について
(1) 避難指示区域内や出荷制限等に係る農林業の一括賠償後の取扱いについて、営農・林業再開に支障が出ないよう、農林業者や関係団体の意向を十分に踏まえたうえで、賠償基準を早急に確定させるとともに、農林業者等へ丁寧な周知・説明を行い、被害の実態に見合った賠償を確実に行わせること。また、風評被害はもとより、地域に特別な状況や被害者に個別具体的な事情がある場合には、被害者の立場に立って柔軟に対応させること。
また、平成31年1月以降の避難指示区域外における農林業の風評賠償について、農林業者や関係団体からの意見・要望に柔軟に対応し、賠償請求手続きの変更に伴う被害者の負担軽減を進めながら、被害者の立場に立った賠償を行わせること。
また、農林水産業に係る営業損害については、依然として県内全域で風評被害が発生している状況を踏まえ、十分な賠償が確実に継続されるようにすること。
(2) 商工業等に係る営業損害の一括賠償については、原子力発電所事故との相当因果関係の確認に当たり、個別訪問等による実態把握に努め、定性的要因を積極的に採用するなど、簡易な手法で柔軟に行うとともに、個別具体的な事情による損害についても誠意を持って対応させること。
また、一括賠償で年間逸失利益の2倍相当額の賠償を受けられなかった被害者からの相談や請求についても相談窓口等で丁寧に対応し、状況の変化があれば、的確な賠償を行わせること。
(3) 商工業等に係る営業損害の一括賠償後の取扱いについて、被害者からの相談や請求に丁寧に対応し、表面的・形式的に判断することなく、地域の状況や事業の特殊性、個別具体的な事情をしっかりと把握した上で、損害の範囲を幅広く捉え、被害の実態に見合った賠償を的確かつ迅速に行わせること。
また、原子力発電所事故との相当因果関係の確認に当たっては、一括賠償請求時の提出書類を最大限活用するなど、手続の簡素化に取り組みながら柔軟に対応し、被害者の負担を軽減させること。
(4) 商工業等に係る営業損害について、同様の損害を受けている被害者が請求の方法や時期によって賠償の対応に相違が生じることのないよう、風評被害の相当因果関係の類型、判断根拠、東京電力の運用基準や個別事情に対応した事例を公表・周知するとともに、書面で理由を明示するなど被害者への分かりやすい丁寧な説明を徹底して行わせること。
(5) 原子力損害賠償紛争解決センターが提示する「総括基準」や「和解仲介案」を原子力災害の原因者としての自覚を持って積極的に受け入れ、確実かつ迅速に賠償を行わせること。
また、同様の損害を受けている被害者に対しては、和解仲介の手続によらず、直接請求によって一律に対応させること。
(6) 原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介実例を被害の状況が類似している地域等において同様に生じている損害に適用し、直接請求により全ての被害者への公平な賠償を確実かつ迅速に行わせること。
(7) 多くの被害者に共通する損害については、類型化による原子力損害賠償紛争審査会中間指針への反映によって確実かつ迅速に賠償がなされるべきものであることから、住民や地域、市町村に混乱を生じさせないよう、審査会における審議を通し、賠償の対象となる損害の範囲を具体的かつ明瞭に指針として示すこと。
また、被災者に対する損害賠償を円滑に行うため、手続きを簡略化させるよう指導するとともに、総合的な判断ができる総括責任者を福島原子力補償相談室に常駐させること。
(8) 市民や企業が自ら行った除染費用については、東京電力が全額賠償するよう強く指導するとともに、対象期間について、平成24年10月1日以降の期間も対象とすること。
(9) 放射能による不安や精神的苦痛を抱えたまま生活を余儀なくされている現状を受け止め、平成24年9月以降の精神的損害に対して、迅速かつ誠実に賠償を行わせること。
(10) 自治体が住民の安全・安心を守るために行っている様々な検査等に要する費用や地域の復興のために実施している風評被害対策などの事業に要する費用等は、その実施体制に要する費用を含め、政府指示の有無に関わらず事故との因果関係が明らかであることから、賠償請求手続を簡素化するとともに、確実かつ迅速に賠償を行わせること。
(11) 原子力発電所事故によって生じた税収の減少分について、目的税はもとより固定資産税を含む普通税も確実に賠償を行わせること。
また、自主避難者の発生に伴う水道使用料金の減収や原子力発電所事故の風評により観光客が減少したことによる公立観光施設における逸失収入について、全て確実かつ迅速に賠償を行わせること。
(12) 自治体の財物の賠償については、自治体等の意向を十分に踏まえ、迅速に賠償を行うとともに、インフラ資産や山林、利用再開が見込めない財物の取扱い含め、個別具体的な事情による損害についても柔軟に対応させること。
(13) 原子力損害賠償紛争解決センターによる県や市町村の和解仲介実例を被害の状況が類似している他の自治体における損害にも適用し、直接請求により公平な賠償を確実かつ迅速に行わせること。
8 住民の健康確保等について
(1) 原発事故に伴う健康管理対策に関して、国は責任をもって主体的に取り組むこと。また、福島県内の自治体に今後の方針等を説明、及び意見交換を行うこと。
(2) 原発事故の影響により医療人材が流出し、人手不足が深刻化していることから、医師、看護師等確保のための人件費補助など医療機関等への支援や自治体への財政措置を継続すること。
(3) 原発事故による人口移動に伴う公立病院の経営悪化に対して自治体が行っている多額の財政支援に係る財政措置を講じること。
(4) 全ての被災者の健康の確保、特に子どもたち、高齢者等の心と体のケアや学校現場での対応への人的及び財政的措置を講じること。
(5) 内部被ばく検査・外部被ばく検査に係る経費及び長期的な健康管理に要する全ての費用や検査機器購入費用について財政措置を講じるとともに、健康に関する個人データの管理運用に対する新たな財政支援を行うこと。
(6) 県民健康調査における甲状腺検査では、甲状腺がん発症率に福島県内における地域差は認められず、原発事故による放射線の影響とは考えにくいとされていることから、この調査結果を実証するため、被ばくと甲状腺がんの因果関係を検証すること。
(7) 長期にわたり18 歳までの医療費無料化を行うこと。
(8) 原発事故の影響により、要支援・要介護認定者が増加し、施設の整備が進むものの、スタッフ不足により施設定員に達するまでの入所ができない状況が発生していることや、保育士が確保できず待機児童が発生している施設があるなど十分な福祉サービスが提供できない状況にあり、避難者の帰還を妨げる要因となっていることから、障がい者支援施設及び介護施設従事者、並びに、保育士及び幼稚園教諭の確保に向けた財政支援を講じること。
(9) 震災と原発事故の影響により多くの住民が避難・転出し人口減少が著しい地域において、魅力ある教育・保育内容を実現できる民間施設の運営体制を確保するため、子どものための教育・保育給付費の公定価格に特別な地域区分を創設するとともに、公立施設に対しても同様に財源を確保することにより、この地域における幼児期の教育・保育の安定的な提供を積極的に支援すること。
(10) リアルタイム線量測定システムについては、安全安心を確保するためのモニタリング体制に関する各自治体の意見を尊重し、国としてあり方を検討すること。
9 産業の流出防止と支援について
(1) 津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金については、対象地域の重点化が図られるが、福島県経済の自立的発展のためには、浜通り地方と連携した全県的な地域振興策が必要であることから、浜通り以外の地域においても、原発事故の影響により工業団地の整備が進まなかった土地のみならず工業団地計画未策定の土地などを対象とすること。
(2) 風評払拭のため、国内外への情報提供や販路拡大、国際会議等コンベンションの開催・誘致、必要な施設の整備等幅広い施策を講じること。
(3) 風評により落ち込む観光客の回復を図るため、国内外への多角的な観光情報の発信、外国人旅行者の誘客、MICEの誘致、観光資源の開発、観光地のハード整備などの各種施策に対する財政措置、訪日外国人も含めた受入のための宿泊施設の整備・改修等にかかる補助制度の充実など、国内外からの観光誘客に資するあらゆる施策を講じること。
(4) 風評も含めあらゆる分野において厳しい状況が続いていることから、地域経済の活性化と安定した雇用の創出を図るため、企業誘致等に必要な土地利用に関する規制緩和及び財政措置を講じるとともに、新たな企業誘致に繋がる工業団地の整備に際し必要となる用地費用、造成工事の整備費用など、財政措置を講じること。
また、空き店舗等の解消に係る財政措置、税制や融資・助成などを含めた中小企業への総合的な支援策、及び被災地における先進的な取組を行っている企業等に対する支援策を講じること。
(5) 復興特区制度について、より一層の企業活動の活性化や雇用促進を図るため、人口30万人以上の都市等において課税することとなっている事業所税についても、税制優遇措置の対象税目とすること。
(6) ふくしま産業復興投資促進特区制度について、復興特区法を改正し、対象地域を重点化するための規定を設け、課税の特例を踏まえた適用期限の延長等を行うこととしているが、福島県の持続的かつ均衡ある発展を図るため、県内全域を適用対象とした現行制度を継続すること。
(7) 原発被災地におけるイノシシによる被害については、野生動物肉の出荷制限に起因する狩猟者の減少等により、農作物被害が広域化かつ深刻化していることから、被害防止体制の強化が図れるよう、復興財源の活用も含めて十分な財源を確保するとともに、国と県とが連携して対策を強化すること。
また、狩猟者が不足しその育成・確保が急務であることから、射撃場における弾丸の補助等狩猟技術向上のための経費について支援措置を講じること。
10 新たな産業と雇用創出の支援について
(1) 福島県を再生可能エネルギー先駆けの地とする福島新エネ社会構想の実現に向け、太陽光発電、蓄電池設備やFCバス、FCV等の普及拡大、水素ステーションなどの供給体制の整備、水素エネルギーシステムの開発等に係る支援、設置技術基準や保安検査の規制緩和など総合的かつ積極的な支援を行うとともに、固定価格買取制度の適正な運用に努めること。
また、広域的な系統利用システムの構築や送電網強化に関して電力会社と連携して、国が主体的に取り組むこと。
(2) 福島・国際研究産業都市構想(福島イノベーション・コースト構想)の復興・創生期間後の更なる推進を図るため、「福島イノベーション・コースト構想を基軸とした産業発展の青写真」を踏まえ取組の柱として掲げた「あらゆるチャレンジが可能な地域」「地域の企業が主役」「構想を支える人材育成」の具体的な取組を促進し、産業振興に向けた創業・進出・成長支援、そのための規制緩和、資金調達の円滑化、深刻な人材不足の解消等に向けた措置を講じること。
また、浜通り地域に整備される様々な研修施設や実証設備が、進出企業と地元企業の連携や地域人材の育成につながるなど、地域にしっかりと根付き、永続できるよう、国が主体的に自治体及び関係機関と一体となって取り組むこと。
(3) 福島ロボットテストフィールド・国際産学官共同利用施設が国内外のロボット関連企業に活用されるよう情報発信を強化するとともに、福島ロボットテストフィールドを核とした産業に必要な人材誘導に向けた取組を支援すること。
(4) ロボット産業を集積させるため、企業立地を促す「自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金」や企業の技術革新を促す「地域復興実用化開発等促進事業費補助金」の期間を延長すること。また、マッチング促進支援など既存企業への支援を強化するとともに、被災事業者の帰還・再建を促す支援「福島県原子力被災事業者事業再開等支援補助金」の継続と十分な予算を確保すること。
(5) 福島復興再生特別措置法に基づく福島復興再生基本方針に則して、内閣総理大臣の認定を受けた重点推進計画において「常磐自動車道のインターチェンジから各拠点へのアクセス機能、及び各拠点間を結ぶアクセス道路網の強化を図る」とされたことを踏まえ、福島イノベーション・コースト構想の実現を図るため、福島ロボットテストフィールドと南相馬インターチェンジを結ぶインターアクセス道路(主要地方道原町川俣線)について、早期整備のため十分な支援を講じること。
11 原子力被災地域の被災者支援の充実について
(1) 避難指示区域等における国民健康保険税、後期高齢者医療制度保険料及び介護保険料の減免、並びに、医療費一部負担金及び介護保険の利用者負担の免除について、住民の生活が安定するまでには相当の期間を要することから、被保険者の健康維持のため、特別措置を今後も継続し、所得制限を廃止すること。
また、免除の縮小、終了に向けては当該被保険者への十分な周知期間を確保すること。
(2) 避難指示区域等における高速道路無料措置について、一時帰宅を含めてふるさとを往来する避難者の経済的な負担を軽減し、家族や地域との関係性を維持し、帰還を促進するため、今後も継続すること。