福島県市長会事務局

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第174回東北市長会総会各県市長会提出特別決議



岩手県市長会提出

東日本大震災からの早期復旧・復興の実現に関する決議


 東日本大震災から8年が経過し,被災した各自治体が懸命の取組を続ける中,それぞれの被災自治体は,復旧・復興の段階に応じた種々の課題に引き続き直面している。
 国においては,平成28年3月に平成28年度からの5年間を「復興・創生期間」と位置付けた復興の基本方針を決定したところであるが,被災自治体において地域の実情に応じた被災者の生活再建や地域の復興に向けた取組を一層加速していくためには,復興財源の確保はもとより,復興事業に係る専門的知識を有する人材の確保,予算制度の拡充・
強化,柔軟な運用等,更なる取組が必要である。
 よって,国は,被災自治体が東日本大震災からの復旧・復興を主体的かつ早期に実現
できるよう,次の事項について特段の措置を講じるよう要望する。


1 復興道路等の整備促進について
 東日本大震災では,三陸沿岸道路等の高規格道路は損傷が少なく,津波襲来時には地域の避難場所として機能し,復旧にあたっては,救援物資運搬や緊急車両の輸送路としての役割を果たし,「命を守る道路」としてあらためて認識されたところである。
 また,内陸部と沿岸部を結ぶ東北横断自動車道釜石秋田線,国道106号,国道281号,国道340号及び国道343号等の横断道路は,内陸部からの緊急物資の輸送路としての重要性が再認識されたところである。
 今後,被災自治体が,甚大な被害を負った各産業の復興,安全・安心な暮らしが営めるまちづくり,三陸ジオパークを中心とした観光振興,地域活性化の実現,そして平成30年6月に就航した宮古港と北海道室蘭港を結ぶフェリーの利用促進のためにも,道路整備促進による「ストック効果」が必要不可欠である。
 さらには,令和元年秋に釜石市で開催されるラグビーワールドカップ2019™においては,選手の輸送や来訪者のアクセスが格段に向上するものと期待しているところである。しかしながら,復興道路は,未開通区間も多く,未だ開通目標宣言が発表されていない箇所もあることから,早期全線開通に向け,次の事項について要望する。
(1) 復興道路「三陸沿岸道路」,復興支援道路「宮古盛岡横断道路」及び「東北横断自動車道釜石秋田線」並びに復興関連道路については,復興のリーディングプロジェクトとなるよう,財源を十分に確保し,整備方針に基づく着実な事業実施により,早期に全線開通を図ること。
(2) 「国道340号押角トンネル」等の社会資本の整備を着実に実施するための必要な公共事業費を確保すること。また,国道343号の笹ノ田峠付近の悪路解消のため,新笹ノ田トンネルの早期事業化を図ること。
(3) 県都盛岡市と県北沿岸地域を結ぶ国道281号は,復興支援道路に位置付けられているが,平成28年台風第10号の通過による法面崩壊や道路流出等の被害も踏まえ,県内90分構想の実現に向けて,未だ交通難所が数多く残っていることから,改良整備を促進し,構想の早期事業化を図ること。
(4) 「宮古盛岡横断道路」の未整備区間及び「宮古箱石道路」の現道活用区間(宮古田鎖ICから(仮称)下茂市橋間外)について早期計画策定を図るとともに,計画路線全体にわたる高規格化を図り,災害に強い「命の道」を国により整備すること。

2 港湾の整備促進及び機能強化について
 東日本大震災では,大津波により,国家石油備蓄基地の地上施設をはじめ,臨海部の漁港施設,主要企業,観光施設等が壊滅的な被害を受けたところであり,市民の生命や財産を自然災害の脅威から守るためには,「命の砦」である湾口防波堤の一日も早い完成が求められるところである。
 また,釜石港においては,震災直後に,国際フィーダーコンテナ定期航路が開設されて以来,コンテナ物流情勢が急激な上昇を続けており,平成30年のコンテナ取扱量は,岩手県過去最多記録を大幅に更新するなど,岩手県全体の経済を牽引する重要な物流拠点となっている。しかしながら,復興道路及び復興支援道路の整備効果を最大限に活用し,経済基盤となる港湾の利用拡大が必要不可欠であるものの,港湾機能の不足等により,利用ニーズに対して必ずしも万全に対応できない状況となっている。
 港湾は,景気浮揚,雇用確保,環境問題への対応など,住民生活や産業振興を支える大変重要な社会基盤であるとともに,その整備が必要不可欠であることから,次の事項について要望する。
(1) 令和10年度完成を目指している久慈港湾口防波堤の確実な予算確保と着実な整備を図ること。
(2) 地域経済活性化の観点から,真に必要なふ頭用地の造成や岸壁整備など,港湾機能の強化を図ること。

3 被災地復興のための職員派遣について
 被災自治体では,復興事業の円滑な実施に必要な職員数確保のため,復興事業への重点的な職員配置や外部委託の積極的な活用,任期付職員等の採用等の取組みを行っているところであるが,震災前に大幅な人員削減を行ってきたこと等の影響から,復興事業が本格化していることに伴う膨大な業務量に十分に対応できる職員数を確保することは困難な状況となっている。
 また,東日本大震災以後も各地で発生する災害に対する人的支援の需要が高まっていること,震災発生から時間が経過するにつれて,各支援自治体においても職員派遣が困難となる状況が見受けられ,岩手県を通じて要請した職員派遣に不足が生じていることから,復興事業の停滞を招かないか危惧している。
 よって,国は,被災自治体の実情を考慮し,各支援自治体からの職員派遣に必要な措置を講じること。

4 被災者への心のケア及びコミュニティ支援について
 被災自治体では,被災された方々が安全・安心に生活できるよう,仮設・復興住宅・在宅被災者を対象とした見守り・訪問活動,復興住宅での自治会形成などのコミュニティ支援,仮設団地,復興住宅自治会での健康体操教室による健康保持,心のケアを中心に活動を展開している。
 しかしながら,未だに東日本大震災からのストレスや新たな環境に順応できず,ストレスを抱えている被災者も存在することから,引きこもりや孤独死防止,ひいてはコミュニティの自立を確固たるものにするための継続した取組みが必要な状況となっている。
 よって,国は,平成32年度以降も被災者の心の復興を図るため,ソフト事業への支
援,制度の継続を行うこと。

5 被災(移転)跡地の利活用に係る予算枠の確保について
 被災地においては,被災された方々の住環境の確保や各種基盤整備の多くが完了を見通せるまでになったほか,水産業を中心とする生業の再生も着実に前進しており,復興への確かな歩みを実感できる段階となっている。
 一方,東日本大震災津波により被災した土地の利活用は,本格復興のまちづくりに向けた重要課題であり,住民と協働で土地利用計画を策定するなど,実現に向けた取組を鋭意進めているが,これらの取組にあたっては,点在する被災(移転)跡地の集約や他の復興事業との調整などが必要不可欠であり,今後においても相当の期間を要すると見込まれている。
 よって,国は,「復興・創生期間」において,被災(移転)跡地の利活用に対する継続的かつ十分な予算配分を行うこと。

6 原木しいたけ産地の再生について
(1) 原木しいたけ生産の再生のための生産再開の妨げとなっている原木購入価格の高騰に対する積極的な追加支援をはじめとした,生産農家の立場に立った各種助成制度など,総合的な再建支援制度を継続すること。
(2) ほだ場の落葉層除去によって発生する落葉層の最終処分方法を提示し,その処理に関する全面的な支援を行うこと。

7 農林業系汚染廃棄物の早期処理について
(1) 農林業系汚染廃棄物の処理加速化事業をその処理が終了するまで継続すること。
(2) 農林業系汚染廃棄物の適切な処理の促進と最終処分までの適切な保管を継続するため,現場の実態に応じて財政的・技術的支援を継続すること。

8 原子力損害賠償に係る東京電力ホールディングス株式会社への指導強化について
(1) 原発事故の原因者としての責任を自覚した上で,山菜・野生きのこ類の出荷制限による損害を受けた産直団体や,根拠書類等を提出できないために損害賠償請求できずにいる産直組織等が行う請求事務の簡素化等により,生産者の負担にならない賠償請求事務が行えるよう強く指導すること。
(2) 原木しいたけ生産の廃業に伴って不要となる施設,機械設備の賠償方針を早期に示すよう強く指導すること。
(3) しいたけ用原木として利用できない地域での山林や立木等のいわゆる財物に対する賠償をするよう強く指導すること。
(4) 原木しいたけ再生産に向けた取組に要した費用に対する賠償を継続するよう強く指導すること。
(5) 市町村からの賠償請求に対し,迅速に支払いに応じるよう強く指導すること。

9 復興庁の後継組織の設置及び復興完遂までの各種支援の継続について
 国は,先般,東日本大震災復興基本法第3条の規定に基づく『「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針』(平成28年3月11日閣議決定)についての変更を閣議決定し,復興庁の後継組織についても「復興庁と同じような司令塔として各省庁の縦割りを排し,政治の責任とリーダーシップの下で東日本大震災からの復興を成し遂げるための組織を置く。」と明記されたところではあるが,具体的な後継組織のあり方については,今後の検討とされている。
 被災地においては,震災から8年が経過したものの,東日本大震災復興基本法に規定された基本理念である,「被害を受けた施設を原形に復旧すること等の単なる災害復旧にとどまらない活力ある日本の再生を視野に入れた抜本的な対策及び一人一人の人間が災害を乗り越えて豊かな人生を送ることができるようにする」を実現するには,更なる時間を要することが見込まれる。
 よって,国は,中・長期的な対応が必要となる新たな復興課題に対応するため,復興の実施主体となる復興庁の後継組織を設置するとともに,復興完遂まで人的支援を含めた各種支援を継続するよう要望する。




宮城県市長会提出

東日本大震災からの復旧・復興に関する決議


 東日本大震災から8年が経過したが,それぞれの被災自治体では,まだまだ復旧・復興の段階に応じた種々の課題に直面している。
 被災自治体において地域の実情に応じた被災者の生活再建や地域の復興に向けた取組みを一層加速していくためには,復興財源の確保はもとより,予算制度の拡充・強化,柔軟な運用等,更なる取組みが必要である。
 よって,国は,被災地の一日も早い復旧・復興が実現されるよう,次の事項について特段の措置を講じるよう要望する。



1 復旧・復興事業の実態に即した財政支援等について
(1) 震災からの復興を成し遂げるために必要な事業について,今後とも復興の進捗に応じ,財源を確実に措置すること。
(2) 復興事業の実施にあたり,震災記憶の風化及び他地域での災害等の影響から,各支援自治体では人員派遣が困難となる状況が見受けられることから,復興を遂げるまでの間,被災市町村への職員派遣について必要な措置を講じること。また,被災地で勤務する職員及び元派遣職員を含めた派遣職員に対するメンタルヘルス対策は極めて重要であることから,平成28年度から実施されている「東日本大震災に関連するメンタルヘルス対策5か年事業」については,被災自治体の要望も踏まえつつ,5年間同様の措置で継続すること。
(3) 災害援護資金の貸付は,所得が一定額に満たない世帯の世帯主を対象としている制度であることから,震災から期間が経過した現在においても依然として生活困窮の状況から抜け出せず約定による償還が困難な者が存在している状況である。よって,国は,自治体が,災害援護資金の支払猶予を適用し,借受人の償還期間を延長した場合には,自治体の国に対する償還期間を延長すること。また,災害弔慰金の支給等に関する法律等に規定されている償還免除について,自治体と協議の上,具体的な基準を明示すること。併せて,債権回収に向けた自治体個々の取組みに係る経費について助成を行うとともに,国において債権回収機構等を設置し,専門的かつ専属的に債権回収を実施すること。
(4) 復興特区法に基づく,地方税の課税免除等を行った自治体に対する減収補てん措置について,復興・創生期間終了後の投資に係る地方税減収分についても,これまでと同様の措置とすること。
 また,令和2年度末までとされている復興特区における税制上の特例措置の期限を,令和3年度以降についても延長すること。

2 被災者の生活再建支援等について
(1) 震災以降の心のケアが必要な児童生徒に対して,よりきめ細かな教育を実現し,豊かな教育環境を整備するため,小中学校全学年の35 人以下学級早期実現など弾力的な学級編制が可能となるよう,加配教員の継続した配置及び教育復興加配終了後の特段の措置を図ること。
(2) 震災によるPTSDを抱える児童・生徒への対応等について,長期的な支援が必要不可欠であることから養護教諭や就学援助の増加等に対応する事務職員も含めた加配の充実を図ること。
(3) 被災児童生徒就学支援等事業について,令和元年度以降も全額国費による支援を継続すること。
(4) 被災者の孤立防止のための地域での見守りやコミュニティの活性化,心のケアを含む健康支援等の各種支援施策を被災自治体や被災者支援団体等が継続的,安定的に実施できるよう,被災者支援総合交付金の交付期間の延長またはそれに変わる補助金等の新設等,必要かつ十分な財政支援を長期的に行うこと。
(5) 被災者生活再建支援金について,津波により住家全体が流失・滅失した場合の支援拡充や宅地被害に対する支援の必要性など,さまざまな課題が明らかとなったことから,総合的な制度の見直しを図ること。

3 地域産業の復興・再生及び公共施設等の復旧支援について
(1) 津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金について,交付申請期限を平成31年3月末から令和3年3月末まで,事業完了期間を令和3年3月末から令和5年3月末まで,それぞれ2年延長を行うこと。また,事業完了期限などの課題が生じた場合には,再延長を含め,復興の状況を踏まえた柔軟な措置を行うこと。
(2) 中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業について,令和2年度まで制度を継続するとともに,従前地以外の場所に仮復旧を行うなど,段階的な復旧を行った事業者には,その補助対象枠を拡大するなど柔軟な制度運用を行うこと。
(3) 農業集落排水事業の廃止に係る農業集落排水施設の撤去及び充填処理等を国費で対応するとともに,廃止に伴い滅失を行う施設について残存する債務の償還を免除する制度の創設を検討すること。
(4) 震災以後,大雨時に仙塩流域下水道管内市町において,地盤沈下や地下水位の変動などに起因していると考えられる公共下水道(汚水)マンホールからの溢水が見受けられ,公衆衛生や市民の健康への影響が懸念されていることから,早急な対応,解決のため必要かつ十分な財政支援を講じること。
(5) 東日本大震災からの復旧事業については,全ての被災市町村が事業を完了できるよう,必要な額を確実に配分するとともに,必要な財源を継続して確保すること。

4 原発事故に対する対応について
(1) 放射性物質で汚染された廃棄物や土壌,焼却灰等の管理・中間処理・最終処分などの処理のプロセスや仮置場・長期管理施設の設置等について,国が主体的に責任を持って住民に説明するとともに,基準を超える廃棄物の処理及び必要な施設の設置について,国が迅速に責任をもって対応すること。また,8,000Bq/kg 以下の一般廃棄物扱いとなる汚染廃棄物について,市町村が処理に取組む場合は,国は柔軟な対応と十分な負担を行うこと。
(2) 除染事業により発生した除染廃棄物や除去土壌の処分については,住民の強い不安感,拒絶感により進まない状況であることから,国が主体的に責任を持って説明するとともに,財政的,技術的支援に止まらず,国の責任において処分すること。
(3) 汚染状況重点調査地域に指定され,除染対象とされた区域から生じた除去土壌の処分基準を定める省令の早期策定を求めるとともに,その処分先の確保について,国が主体的に責任を持って対応すること。
(4) 親水空間として多くの市民が利用している河川等の除染対策の方針を早急に示すとともに,適切な措置が講じられるまでは,測定ポイントを河川毎に適切に選定の上,空間放射線量の測定を継続的に実施し公表する等,十分な情報提供を行うこと。
(5) 福島第一原子力発電所の汚染水対策について,平成25年9月に国が前面に出て汚染水対策を実行していくという基本方針を発表しているが,その後も流出が疑われる事態が判明していることから,国が主体的に取り組み,実効性のある地下水対策,汚染水流出阻止及び風評被害防止に関する措置を速やかに実施すること。
(6) 放射線による健康影響調査について,国の責任と判断において,調査実施の必要性や対応方針に関する明確な基準を早急に示し,必要があると認められた場合は,国の責任において調査を実施すること。
(7) 原発事故に起因する農林畜産物,水産物に係る風評被害対策を講じるとともに,東京電力に対し損害賠償の拡大及び早期支払を指導すること。また,観光業の風評被害について,宮城県内の観光業に対する影響を正しく認識し,福島県と同様の内容で損害賠償するとともに,東京電力に対しては,東北以外の地域からの観光客入込みに限った損害賠償対象を拡大し,震災後わずか1年間とした対象期間を将来にわたって認めるよう指導すること。
(8) イノシシ被害が年々拡大し,イノシシ自体が生息域を広げながら繁殖を続けている状況下においては,単一の市町村だけでの対策では限界があることから,国・県が主体となり,広域的な対策(駆除、防除及び処分等)を行うこと。
(9) 30km圏外の地域に対する原子力防災対策の基準や対策の具体的内容を早急に明らかにするとともに,対策実施段階での具体的な手順や方法を提示し,対策に要する費用について十分な財政措置を講じること。特にモニタリングポストの設置等,防護対策のための資機材の整備・維持管理に係る財源措置を講じること。



福島県市長会提出

東日本大震災からの復興に関する決議


 東日本大震災は,広範囲にわたり甚大な被害をもたらした大規模な災害であり,その影響は被災地域のみならず,全国規模に及ぶ未曾有の事態となり,その被害への対応は自治体のみでは困難なほど甚大なものである。
 よって,国は,次の事項について特段の措置を講じるよう要望する。



1 復旧・復興事業の実態に即した財政支援等について
(1) 震災からの復興を成し遂げるために必要な事業や福島復興再生特別措置法等の法律に基づく減収への補てんについて,今後とも復興の進捗に応じ,復興交付金(特に市街地復興効果促進事業),社会資本整備総合交付金(復興枠)等復興関連の交付金制度及び震災復興特別交付税による財政支援等について,柔軟な対応や予算規模の拡充を図るとともに,復旧・復興が完了するまで継続すること。
 また,復興交付金を,地方創生のモデルとなる取組にも活用できるよう被災地の自立につながる取組や避難解除等区域等と連携して取り組む事業,防集移転元地の具体的利用計画がない段階においても利活用に際し必ず必要となる最小限の基盤整備など,被災地が必要と考える取組に柔軟に対応するとともに,復興交付金(特に一括配分された交付金)や福島再生加速化交付金のほか,防災関連事業については,被災地が実情を勘案し必要と認める事業が着実に実施できるよう制度を弾力的に運用すること。
(2) 被災地で勤務する職員及び元派遣職員を含めた派遣職員に対するメンタルヘルス対策は極めて重要であることから,平成28年度から実施されている「東日本大震災に関連するメンタルヘルス対策5か年事業」について,被災自治体の要望を踏まえつつ,確実に実施すること。
(3) 災害援護資金貸付金の償還について,多額の未収金の発生が想定されることから,国・県主導により回収体制を整備するとともに,回収に係る費用について地方交付税措置を講じること。
 また,地方自治法による徴収停止や,地方税法による滞納処分の執行停止に合致するような,「所在不明」や「滞納処分ができる財産がない場合」などの回収困難な案件については償還免除とできるよう免除要件を改めること。
 また,自治体が貸付金に係る債権を免除又は放棄することが適当であると判断する場合に国が自治体に対する債権を免除するよう規定を整備すること。
(4) 被災地の仮設店舗等の撤去について,独立行政法人中小企業基盤整備機構が整備し,市町村に譲渡した仮設店舗等については,当該機構において仮設施設有効活用等支援事業の撤去費用への助成要件は嵩上工事等の復興関連事業,土地所有者等の事情又は集約化で5事業者以上が移動する場合に限られており,対象事業者の状況の変化等に伴い要件を満たさなくなり,市単費による対応となるものがあることから,要件の緩和を働きかけること,又は国による支援制度を創設すること。

2 被災者の生活再建支援等について
(1) 東日本大震災特別家賃低減事業について,建物管理開始後6年目以降は災害公営住宅の入居者の家賃の負担割合が段階的に増え,国の補助額は低減することとなっているが,収入の増加の見込めない高齢者世帯など,入居者の状況に応じ自治体独自に減免を行った場合において財政措置を講じるとともに,事業期間を延長し,自治体が11年目以降も減免を行う場合には同様の措置を講じること。
(2) 東日本大震災等の影響による医療費の増加は,今後も続くことが想定されることから,医療費増加に伴う負担増分として財政支援を継続すること。
(3) 津波により広域かつ甚大な被害を受けた沿岸地域において,全壊家屋の再建等に対し最大300万円を支給する被災者生活再建支援制度があるものの,被災者の中には高齢者や生活困窮者など自宅再建が困難な方もいることや半壊家屋については対象外となっているなど課題が明らかとなったことから,被災者が自らの望む生活再建を果たせるよう,被災者の生活状況や被災地の実態等を踏まえ, 被災者生活再建支援制度の上限額や適用範囲などの拡充を図ること。

3 公共施設等の復旧支援について
(1) 復興道路・復興支援道路の供用までには期間を要することから,事業を確実に実施するために,完成まで継続的に財源を確保するとともに早期供用を図ること。
 また,東北中央自動車道相馬・福島道路については,相双地域から福島県立医科大学付属病院への搬送時間を大幅に短縮するなど,福島復興に大きく貢献することが期待されているが,国道13号福島西道路の南伸により,その搬送時間はさらに大きく短縮することが期待され,災害時の代替路を確保できる効果や物流の向上による産業復興も期待できることから,福島西道路の南伸事業を復興に不可欠なものとして,更なる事業の加速化を図ること。
(2) 国は復興道路・復興支援道路の緊急整備など被災地域の早期復旧・復興に全力で取り組むとしているが,避難者の生活支援など被災地域の確実な復興再生を図るためには,更なる幹線道路網の充実強化や地域の復興に寄与する道路整備を促進する必要があることから,重要物流道路について,常磐自動車道,磐越自動車道,一般国道6号・49号はもとより,主要物流拠点や災害時の拠点施設とを接続する基幹道路等を指定し,平常時・災害時を問わない安定的な輸送を確保できるよう,指定された道路の機能強化や整備に重点支援を行うこと。
(3) 地方特定道路整備事業の廃止は,地方自治体の負担の著しい増大をもたらしていることから,計画的な道路整備事業の実施のため,代替措置を講じるなど財政支援を行うこと。
(4) 復興を加速化させていくためには,JR常磐線全線の全線再開及び利便性の向上は必須であり,双葉地区の方々の早期帰還をはじめ,福島県の復興を強く印象づけることによる観光やビジネスの復興,国内外からの交流人口の拡大,福島第一原子力発電所の廃炉作業の加速化,福島・国際研究産業都市構想(イノベーション・コースト構想)の実現,2020年東京オリンピック・パラリンピックにおけるインバウンド促進等につながることから,東日本旅客鉄道株式会社と緊密に連携し,令和元年度末までの全線開通実現に向けた取組に努めるとともに,全線再開に当たり,福島県浜通り地方と東京を直通で結ぶ特急列車や,福島県浜通り地方と仙台を結ぶ快速列車など,震災前より利便性の向上を図り,更には,線形改良や道路との立体交差等による高速化など,単なる復旧にとどまらない基盤強化を図るようJR東日本に対する助言・指導を講じること。
(5) 東日本大震災により沿岸部においては地盤沈下が発生し,広範囲にわたって浸水したことから,住民の生活基盤再建のため,雨水排水のためのポンプ場をはじめ震災からの復旧に不可欠な施設を整備したところであるが,これら施設の維持管理費について基準財政需要額に算入し,交付税措置を講じること。
 また,これら施設は恒久的に活用するものであり,将来老朽化に伴う更新費用も必要となるため,改築・更新に対する財政支援を今後検討すること。




福島県市長会提出

東京電力福島第一原子力発電所事故への対応に関する決議

 東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により,平成31年4月現在で,福島県民だけでも3万9千人余もの方々が避難を余儀なくされている。
 東京電力福島第一原子力発電所事故は,放射線被ばくによる健康被害への不安,風評による観光客の激減など様々な影響を及ぼしている。
 よって,国は,原発事故の早期収束へ向け,自らの責任のもと着実な取組を強力に推進するとともに,正確な情報の迅速な公表に努め,次の事項について, 特段の措置を講じるよう要望する。


1 原子力発電所事故に関する対応への財政支援等について
(1) 全国的に景気の回復・拡大基調が強まる中で,原子力災害による風評,除染・復興関連事業のピークアウトなどから,福島県経済だけは唯一,回復の動きが鈍化しており,今後の推移が懸念される状況にある。このため,復興・創生期間終了後も,ふくしま復興に関する特段の対策が必要であり,その計画的な推進を図るためにも,財政支援の枠組みを早期に示すとともに,農業の復興に必要なため池の放射性物質対策,農林水産物に係る風評の払拭,観光の再生に関する補助制度,企業立地に関する特別な補助制度など,福島県経済の自立的発展を可能とするような特別対策,並びに,風評・偏見の解消とそれに対する心の復興に関する対策及び避難者の受入れ自治体が適切にサービス提供ができる財政措置を講じるなど被災市町村の状況に即した切れ目のない財政支援について,避難指示が出された区域以外も含めて特段の措置を講じること。
(2) 復興・創生期間において放射能災害として実施する除染・放射線のモニタリング,健康管理,食品の放射線量測定,風評被害対策など,原発事故由来の事業については,復興・創生期間以後も長期に及ぶことが予想されるため,全額国費による財政措置を長期的に継続すること。
(3) 福島再生加速化交付金について,「個人線量管理・線量低減活動支援事業」「相談員育成・配置事業」「農山村地域復興基盤総合整備事業のうち,ため池の底泥流入・拡散防止対策」について,今後もこれまで同様,地域の実情に応じた柔軟な対応と十分な財源の確保を継続すること。
 また,避難指示区域及び旧緊急時避難準備区域12市町村から多くの避難者を受け入れている周辺地域においては,共に復興に向けて取り組んでいるところであり,一日も早い復興・再生を成し遂げるため,当該12市町村のみが対象となっている事業について,浜通り全体で活用できるよう対象地域の拡充を図ること。
(4) 原子力災害に伴う固定資産税等の減収分の全額について,財政措置を講じること。
(5) 避難指示区域等からの長期避難者については住民票を「避難元自治体に置いたままで差し支えない」とされているが,避難者への適切な行政サービス提供の観点や住民意向調査では帰還する意思のない避難者もいることなどから,住民票の扱いについて見直すこと。
(6) 全国避難者情報システムに基づく避難者登録制度について,避難の終了や変更が生じているものの,避難者からその旨の届出がないことで,避難者名簿が正確性を欠き,居住実態が把握できない世帯が多い状況では,避難先・避難元の自治体が行っている避難者への支援に支障が生じることとなるため,避難の実態を十分に把握できるよう,更新制とし,有効期限を記載した避難証明書を発行するなど見直しを図り,実効性を確保すること。

2 放射性物質の除染対策について
(1) 放射性物質汚染廃棄物の最終処分までの計画を早期に示すこと。
(2) 中間貯蔵施設の早期完成に努めること。
 また,中間貯蔵施設への輸送について,国は令和3年度までに,県内に仮置きされている除去土壌等(帰還困難区域を除く)の概ね輸送完了を目指すとする方針を示したが,各自治体に対して令和2・3年度別輸送計画を早期かつ明確に示すとともに,輸送の早期完了に向け各自治体の要望に対して柔軟な対応に努めること。
 除去土壌等の適正管理・搬出,積込場の整備,仮置場の原状回復などについては,地域の実情に即した柔軟な対応とそれに伴う安定的な財政措置を講じること。
(3) 福島県内においては,8,000Bq/kgを超え100,000Bq/kg以下の飛灰等を埋立処理する特定廃棄物セメント固型化施設への輸送スケジュールを厳守し,早期に輸送を完了させるとともに,100,000Bq/kgを超える指定廃棄物について,処理のスケジュールを早期に示すこと。
 8,000Bq/kg以下の一般廃棄物扱いとなる汚染廃棄物について,民間の技術を活用した再資源化処理を行う場合に必要な費用について財政支援を講じるとともに,市における処分は処理期間の問題や処理施設周辺住民の強い拒絶感があることから,中間貯蔵施設へ搬入すること。
 また,8,000Bq/kg以下の道路等側溝堆積物について,国の責任により処理すること。
(4) 住宅地から20m以上離れた森林など除染の枠組から外れた箇所等で,人への健康影響等が懸念されると思われる箇所が判明した場合は,リスクコミュニケーションによる不安解消や線量低減化をはじめとした環境回復措置について,継続した支援策を講じること。
(5) 除染の進捗や中間貯蔵施設への安全かつ円滑な輸送のため重要となる県内の基幹的な道路の整備,特に,常磐自動車道の早期全線4車線化,国道6号の南相馬市内一部4車線化を含む早期整備完了,国道49号及び399号の早期整備完了,相馬福島道路の早期完成のため,十分な整備予算を確保するとともに,原子力災害からの復興・再生,避難住民の帰還を加速させるため,(仮称)小高スマートインターチェンジを設置すること。
 また,汚染土壌の中間貯蔵施設への輸送による更なる道路の破損や交通量の増加等が懸念されることから,道路の拡幅及び路面破損時の修繕等を併せた仮置き場からのアクセス道路の環境整備について,現場の実情に即した柔軟な対応とそれに伴う安定的な財政措置を講じること。

3 廃炉・汚染水対策について
 廃炉対策について,事業者に任せることなく国が前面に立ち,具体的工程を示すとともに,国内外からの英知を結集し,燃料デブリの取り出しを含め,安全かつ確実に完遂すること。
 汚染水対策について,国が主体的に取り組み,実効性のある地下水対策, 汚染水流出阻止対策及び正確で迅速な情報発信など風評被害防止に関する措置を可及的速やかに実施すること。

4 放射能教育について
 国民の間で放射能に関する理解が進んでいないことから,高等学校の入学試験や国が関わる試験に放射能に関する設問を検討するなど,子どもから大人まで幅広い年齢層が放射能に関する正しい知識を習得するとともに,これに基づき適切に行動する能力の向上を図るためのあらゆる施策を国を挙げて取り組むこと。

5 食品の安全確保対策への支援について
(1) 風評被害対策として,国内外に向けた福島県産農林水産物の安全性をPRする広報活動を国の主導により展開すること。
 また,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会において,GAP(農業生産工程管理)やMSC(海のエコラベル)等の認証を受けた福島県産農林水産物を積極的に活用すること。
(2) 原発事故の影響により,特に漁業の風評被害が深刻であることから,その対策として,地産地消を目的に第三セクター等が市場を整備し,イベント等を行うことに対する支援策を講じること。
(3) モニタリング体制の維持・充実と併せ,地域の安全性に係る正確な情報を積極的に発信するとともに,福島県で生産された農林水産物のPRへの支援など, 地域と連携した取組を推進すること。

6 原子力発電所事故に伴う損害賠償の適正な実施及び迅速化について
(1) 平成31年1月以降の避難指示区域外における農林業の風評賠償について,円滑な移行に向けて農林業者等へ丁寧な説明を行うとともに,関係団体からの意見・要望に柔軟に対応し,被害者の立場に立った賠償を行わせること。
 また,避難指示区域内や出荷制限等に係る農林業の一括賠償後の取扱いについて,賠償の考え方を早急に示すとともに,農林業者や関係団体の意見を十分に踏まえた対応をさせること。
 農林水産業に係る営業損害については,依然として県内全域で風評被害が発生している状況を踏まえ,十分な賠償が確実に継続されるようにすること。
(2) 商工業等に係る営業損害の一括賠償については,原子力発電所事故との相当因果関係の確認に当たり,個別訪問等による実態把握に努め,定性的要因を積極的に採用するなど,簡易な手法で柔軟に行うとともに,個別具体的な事情による損害についても誠意を持って対応させること。
 また,一括賠償で年間逸失利益の2倍相当額の賠償を受けられなかった被害者からの相談や請求についても相談窓口等で丁寧に対応し,状況の変化があれば, 的確な賠償を行わせること。
(3) 商工業等に係る営業損害の一括賠償後の取扱いについて,被害者からの相談や請求に丁寧に対応し,形式的に判断することなく,地域の状況や事業の特殊性,個別具体的な事情をしっかりと把握した上で,損害の範囲を幅広く捉え,被害の実態に見合った賠償を的確かつ迅速に行わせること。
 また,原子力発電所事故との相当因果関係の確認に当たっては,一括賠償請求時の提出書類を最大限活用するなど,手続の簡素化に取り組みながら柔軟に対応し,被害者の負担を軽減させること。
(4) 商工業等に係る営業損害について,同様の損害を受けている被害者が請求の方法や時期によって賠償の対応に相違が生じることのないよう,風評被害の相当因果関係の類型,判断根拠,東京電力の運用基準や個別事情に対応した事例を公表・周知するとともに,書面で理由を明示するなど被害者への分かりやすい丁寧な説明を徹底して行わせること。
(5) 原子力損害賠償紛争解決センターが提示する「総括基準」や「和解仲介案」を原子力災害の原因者としての自覚を持って積極的に受け入れ,確実かつ迅速に賠償を行わせること。
 また,同様の損害を受けている被害者に対しては,和解仲介の手続によらず,直接請求によって一律に対応させること。
(6) 原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介実例を被害の状況が類似している地域等において同様に生じている損害に適用し,直接請求により全ての被害者への公平な賠償を確実かつ迅速に行わせること。
(7) 多くの被害者に共通する損害については,類型化による原子力損害賠償紛争審査会中間指針への反映によって確実かつ迅速に賠償がなされるべきものであることから,住民や地域,市町村に混乱を生じさせないよう,審査会における審議を通し,賠償の対象となる損害の範囲を具体的かつ明瞭に指針として示すこと。
 また,被災者に対する損害賠償を円滑に行うため,手続きを簡略化させるよう指導するとともに,総合的な判断ができる総括責任者を福島原子力補償相談室に常駐させること。
(8) 市民や企業が自ら行った除染費用については,東京電力が全額賠償するよう強く指導するとともに,対象期間について,平成24年10月1日以降の期間も対象とすること。
(9) 放射能による不安や精神的苦痛を抱えたまま生活を余儀なくされている現状を受け止め,平成24年9月以降の精神的損害に対して,迅速かつ誠実に賠償を行わせること。
 また,旧屋内退避区域と旧緊急時避難準備区域における精神的損害にかかる賠償期間の公平な取扱いを行うとともに,旧屋内退避区域に係る財物賠償を早期決定すること。
(10) 自治体が住民の安全・安心を守るために行っている様々な検査等に要する費用や地域の復興のために実施している風評被害対策などの事業に要する費用等は,その実施体制に要する費用を含め,政府指示の有無に関わらず事故との因果関係が明らかであることから,賠償請求手続を簡素化するとともに,確実かつ迅速に賠償を行わせること。
(11) 原子力発電所事故によって生じた税収の減少分について,目的税はもとより固定資産税を含む普通税も確実に賠償を行わせること。
 また,自主避難者の発生に伴う水道使用料金の減収について全て確実に賠償を行わせること。
(12) 自治体の財物の賠償については,自治体等の意向を十分に踏まえ,迅速に賠償を行うとともに,インフラ資産や山林,利用再開が見込めない財物の取扱い含め,個別具体的な事情による損害についても柔軟に対応させること。
(13) 原子力損害賠償紛争解決センターによる県や市町村の和解仲介実例を被害の状況が類似している他の自治体における損害にも適用し,直接請求により公平な賠償を確実かつ迅速に行わせること。

7 住民の健康確保等について
(1) 原子力災害に伴う健康管理対策に関して,国は責任をもって主体的に取り組むこと。また,福島県内の自治体に今後の方針等を説明,及び意見交換を行うこと。
(2) 原発事故の影響により医療・介護人材が流出し,人手不足が深刻化していることから,医師,看護師,介護職員等確保のための人件費補助など医療機関等への支援や自治体への財政措置を継続すること。
(3) 全ての被災者の健康の確保,特に子どもたち,高齢者等の心と体のケアや学校現場での対応への人的及び財政的措置を講じること。
(4) 内部被ばく検査・外部被ばく検査に係る経費及び長期的な健康管理に要する全ての費用や検査機器購入費用について財政措置を講じるとともに,健康に関する個人データの管理運用に対する新たな財政支援を行うこと。
(5) 県民健康調査における甲状腺検査では,甲状腺がん発症率に福島県内における地域差は認められず,原発事故の影響ではないとされていることから,この調査結果を実証するため,被ばくと甲状腺がんの因果関係を検証すること。
(6) 長期にわたり18 歳までの医療費無料化を行うこと。
(7) 原子力災害の影響により,要支援・要介護認定者が増加しているにも関わらずスタッフ不足により全面稼働できない施設があることや,保育士が確保できず待機児童が発生している施設があるなど十分な福祉サービスが提供できない状況にあり,避難者の帰還を妨げる要因となっていることから,障がい者支援施設及び介護保険施設従事者,並びに,保育士及び幼稚園教諭の確保に向けた財政支援を講じること。
(8) 原子力災害による避難地域において魅力ある教育・保育内容を実現できる運営体制を確保するため,子どものための教育・保育給付費の公定価格に特別な地域区分を創設するとともに,公立施設に対しても同様に財源を確保することにより,この地域における幼児期の教育・保育の安定的な提供を積極的に支援すること。
(9) リアルタイム線量測定システムについては,安全安心を確保するためのモニタリング体制に関する各自治体の意見を尊重し,国としてあり方を検討すること。

8 産業の流出防止と支援について
(1) 原子力災害の影響,除染・復興関連事業のピークアウトなどに伴い,福島県経済だけが景気の回復基調が弱くなっている。このため,企業立地を促進し地域経済の自立的発展を可能とするよう,平成31年4月以降も企業立地に対する特別な補助制度を設けること。
(2) 風評払拭のため,国内外への情報提供や販路拡大国際会議等コンベンションの開催・誘致,必要な施設の整備等幅広い施策を講じること。
(3) 風評により落ち込む観光客の回復を図るため,観光地のハード整備などの各種施策に対する財政措置,2020年東京オリンピック・パラリンピック等による訪日外国人も含めた受入のための宿泊施設の整備・改修等にかかる補助制度の創設など,国内外からの観光誘客に資するあらゆる施策を講じること。
(4) 風評も含めあらゆる分野において厳しい状況が続いていることから,地域経済の活性化と安定した雇用の創出を図るため,企業誘致等に必要な土地利用に関する規制緩和及び財政措置を講じるとともに,新たな企業誘致に繋がる工業団地の整備に際し必要となる用地費用,造成工事・アクセス道路の整備費用など,財政措置を講じること。
 また,空き店舗等の解消に係る財政措置,税制や融資・助成などを含めた中小企業への総合的な支援策,及び被災地における先進的な取組を行っている企業等に対する支援策を講じること。
(5) 復興特区制度について,より一層の企業活動の活性化や雇用促進を図るため,人口30万人以上の都市等において課税することとなっている事業所税についても,税制優遇措置の対象税目に加えること。
(6) 原発被災地におけるイノシシによる被害については,野生動物肉の出荷制限に起因する狩猟者の減少等により,農作物被害が広域化かつ深刻化していることから,被害防止体制の強化が図れるよう,復興財源の活用も含めて十分な財源を確保するとともに,国と県とが連携して対策を強化すること。
 また,狩猟者が不足しその育成・確保が急務であることから,射撃場における弾丸の補助等狩猟技術向上のための経費について支援措置を講じること。

9 新たな産業と雇用創出の支援について
(1) 福島県を再生可能エネルギー先駆けの地とする福島新エネ社会構想の実現に向け,再生可能エネルギーや新エネルギーの企業や家庭での導入も重要であることから,太陽光発電,蓄電池設備やFCバス,FCV等の普及拡大,水素ステーションなどの供給体制の整備,水素エネルギーシステムの開発等に係る支援,設置技術基準や保安検査の規制緩和など総合的かつ積極的な支援を行うこと。
(2) 再生可能エネルギーに係る事業化検討に当たり,固定価格買取制度の適正な運用に努めるとともに,既存送電網に空き容量が不十分な地域においては, 系統増強の費用が莫大となるため事業化に踏み切れない発電事業者が多いことから,国が主導して系統増強を推進するとともに,発電事業者及び一般配送電事業者が負担すべき費用に対する財政支援を行うなど,広域的な系統利用システムの構築や送電網強化に関して電力会社と連携して,国が主体的に取り組むこと。
(3) 福島・国際研究産業都市構想(福島イノベーション・コースト構想)の各種施策の実施における十分な支援を講じること。
(4) 福島ロボットテストフィールド・国際産学官共同利用施設が国内外のロボット関連企業に活用されるよう情報発信を強化するとともに,福島ロボットテストフィールドを核とした産業に必要な人材誘導に向けた取組を支援すること。
(5) ロボット産業を集積させるため,企業立地を促す「自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金」や企業の技術革新を促す「地域復興実用化開発等促進事業費補助金」の期間を延長すること。また、マッチング促進支援など既存企業への支援を強化するとともに,被災事業者の帰還・再建を促す支援「福島県原子力被災事業者事業再開等支援補助金」の継続と十分な予算を確保すること。
(6) 福島復興再生特別措置法に基づく福島復興再生基本方針に則して,内閣総理大臣の認定を受けた重点推進計画において「常磐自動車道のインターチェンジから各拠点へのアクセス機能,及び各拠点間を結ぶアクセス道路網の強化を図る」とされたことを踏まえ,福島イノベーション・コースト構想の実現を図るため, 福島ロボットテストフィールドと南相馬インターチェンジを結ぶインターアクセス道路(都市計画道路下高平北長野線)について,早期整備のため十分な支援を講じること。

10 事故の影響を受けた地域における治安維持のための支援について
 復旧・復興事業が進捗する一方で,住民が移転した復興住宅団地や帰還先などで
新たな地域コミュニティを形成するとともに,防犯体制を再構築して安心できる居
住環境をつくる必要があることから,各自治体が実施する治安の維持向上に向けた
パトロール等治安維持への取組,防犯カメラの設置及び児童・生徒に対する防犯ブ
ザーの配付などに対する制度的・財政的支援を講じること。



 
福島県市長会提出

復興庁後継組織のあり方に関する決議

 
 国は, 平成31年3月に「「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針」を見直し, 復興庁の後継組織として, 復興庁と同じような司令塔として各省庁の縦割りを排し, 政治の責任とリーダーシップの下で東日本大震災からの復興を成し遂げるための組織を置くとしたところである。
 東日本大震災及び福島第一原子力発電所の事故から8年が経過したものの,東日本大震災復興基本法に規定された基本理念である, 被災者による自発的な協働や新たな地域社会の構築に至るまでの地域住民の絆の維持及び強化には未だ至っていない。
 よって, 国は, 原子力災害の影響が未だ残る深刻な状況からの着実な復興を成し遂げるためには,中・長期的な対応が必要であることに鑑み, 令和3年度以降においても, 専任の担当大臣を置くなど, 被災地の課題に迅速に対応できる復興庁後継組織を構築し, 全省庁体制で復興及び諸課題解決に取り組むよう要望する。




青森県市長会提出

防災・減災対策の充実強化に関する決議

 緊急防災・減災事業については,平成23年度の国の補正予算(第3号)から地方債の対象となり, 東日本大震災を教訓として, 全国的に緊急に実施する必要性が高く, 即効性のある防災・減災等のための事業が対象とされている。
 また, 平成31年度地方債計画において, 緊急防災・減災事業債に加え,防災・減災・国土強靱化緊急対策事業債や緊急自然災害防止対策事業債等を創設することとされたが,事業年度はいずれも令和2年度までの時限的なものである。
 防災・減災対策については, 各自治体が抱える災害への弱みにきめ細かく対応しながら, 今後も継続して大規模かつ長期にわたって取り組んでいかなければならず, 国においては更なる即効性のある事業実施が促進されるよう, 引き続き防災・減災対策を充実強化させることが必要である。
 よって,国は,地方自治体が地域の実情に即した災害対策を行えるよう,防災・減災・国土強靱化に係るソフト・ハード面への支援内容をより一層拡充するとともに,緊急防災・減災事業債等の財源措置については,令和3年度以降も引き続き確実かつ恒久的なものとするよう強く要望する。




岩手県市長会提出

移住支援事業における返還制度に関する決議

 移住支援事業は,東京圏への過度な一極集中の是正及び中小企業等における人手不足の解消を目的とし, 移住先の地方公共団体が地方創生推進交付金を活用して移住者に対し支援金を支給することを可能とするものであり,国,都道府県,市町村が連携して移住を迷っている方の背中を押すことによって, 人口減少に悩む地方への新しい人の流れをつくるものと期待している。
 この事業における移住支援金は, 定住する意思を持って移住する方の引越などの費用負担を軽減するものであり,支給対象者の要件を満たせば一括払いにより支給し,市町村の判断が及ぶものではない一方で返還制度が設けられており, 平成31年4月24日付け内閣府地方創生推進事務局の「移住支援事業・マッチング支援事業について」によれば,事業主体となる都道府県及び市町村が返還制度を設けることとされており, 返還対象者の要件として次の3点が定められている。
 一つ目は,移住支援金の申請日から5年以内に移住支援金を受給した市町村から転出した場合,二つ目は,移住支援金の申請日から1年以内に移住支援金の要件を満たす職を辞した場合,三つ目は, 虚偽の申請であることや居住や就業の実態が無いこと等が明らかとなった場合である。
 また,返還金額について全額を返還する場合としては,虚偽の申請等が明らかとなった場合,移住支援金の申請日から3年未満で転出した場合,移住支援金の申請日から1年以内に移住支援金の要件を満たす職を辞した場合とされており,移住支援金の申請日から3年以上5年以内に転出した場合は, 半額を返還することとされている。
 移住支援金の対象者に支援金を支給した市町村は, 返還が必要となった対象者に対し,国と県の負担分を合わせた全額の返還請求を行い,対象者から返還を受けて県に返還することが想定されており, 2019年度地方創生推進交付金(移住・起業・就業タイプ)に関するQ&A(第4版)によれば,地方公共団体が移住支援金を受給した者から債権回収できない場合について「一般論として,債権回収できない場合も含めて移住支援金が返還されなかった場合,国は,補助事業者たる都道府県に対して, 交付金の返還を求める場合がある」とされており,国が補助金適正化法に基づき返還命令を行う場合には「同法第18条に基づき補助金の返還を求める場合,補助事業者等に該当する都道府県に対して,国費負担分の額の返還を命じることを想定している」とされていることから,対象者から債権回収できない場合には,都道府県からの返還の求めにより,返還を要する全額を市町村が負担しなければならない場合が想定される。
 しかしながら,返還対象の5年間は,全ての移住支援金受給者の状況を常に把握し,返還が必要となった場合には,支給金額が多額のため対象者が返還に応じないことが考えられ,訴訟による債権回収を行わざるを得ない可能性があり,市町村議会の承認を得る必要が出てくるなど,市町村にとっては事務負担が大きく,また,債権回収できない場合には,一般財源によって国及び都道府県負担分も含めて返還することとなり, 財政的にも大きな負担となる可能性があることから,容易に市町村民からの理解を得られるものではない。
 よって, 国は, 移住支援事業における返還制度について市町村の負担を軽減するため,例えば,返還要件の転出時期を短縮することや, 移住支援金の一部について一定期間の実績確認後に支給し転出や退職における返還を求めないこと, 対象者の所在調査の結果によっても所在が不明な場合や支払い能力が無いと認められる場合は返還を求めないなど,対象者から債権回収できない場合について, 市町村のみが事務負担及び一般財源からの負担を負うことのないよう特段の措置を講ずるよう要望する。



岩手県市長会提出

国際リニアコライダーの誘致実現に関する決議

 国際リニアコライダー( I L C ) は, 我が国が標榜する科学技術創造立国と科学外交の実現, 高度な技術力に基づくものづくりの競争力強化, さらには,人づくり革命等を促し, 我が国の成長戦略に貢献する極めて重要な計画である。
 国内建設候補地とされる東北では, 加速器関連技術を用いたプロジェクトが順次計画されており, 今後, 関連産業の集積が進み, その集大成としてI L Cの建設が実現すれば, 高度な技術力に基づくモノづくり産業を更に成長発展させ, 日本再興に大きく寄与するばかりではなく, 国際的なイノベーション拠点の形成等が進み, 世界に開かれた地方創生の実現が期待される。
 さらには, I L C 計画は, 東日本大震災からの創造的産業復興, ひいては日本の成長にも大きな役割を果たすものと確信している。
 東北は, 今後とも, 国内の他地域との連携を一層深め, 産学官民が一体となり, I L C の実現に向けて最大限の努力をしていくものである。
 よって, 国は, I L C の早期実現に向けて, 次の事項に取り組むよう要望する。



1 I L C の実現に向け, 国際プロジェクトを主導する立場として, 各国との資金の分担や研究参加に関する国際調整等の早期合意を目指し, 確実な実現を図ること。

2 I L C 実現に向けた政産官学及び地域社会での様々な取組を海外政府に情報発信すること。

3 I L C 計画を我が国の科学技術の進展, さらに地方をつなぐ産業・情報・技術のネットワークの形成, 民間の力を伸ばす成長戦略, 地方創生の柱に位置付けること。