第87回全国市長会議 決議 |
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都市税財源の充実強化に関する決議 |
今日の地方財政は、急速に進行する少子・高齢化社会に対応した福祉・医療サービ スの充実や地域経済の活性化、さらには多発する自然災害に備えるための防災・減災
対策など、様々な課題への対応に必要となる財政需要は増加する一途にある。 全国の地方自治体においては、これまでも民間委託の推進や総人件費の抑制など、 徹底した行財政改革に取り組んできたところであるが、今後、社会保障関係費の更な る増嵩が見込まれる中において、消費税率 10%への引上げが先送りされ、社会保障充 実のための財源を失うなど、地方の財源不足は更に拡大し、依然厳しい状況が続いて いる。 一方、経済財政諮問会議等においては、地方の基金残高の増加等をもって地方財政 に余裕があるかのような議論がなされているところであるが、このような議論は地方 財政の実態を踏まえていないものと言わざるを得ず、国財政の健全化を優先した地方 歳出の削減は断じて容認できない。 我々都市自治体が地域の実情に沿ったきめ細かな行政サービスを持続的に提供し、 かつ、人口減少社会を踏まえた地方創生への取組をはじめとする新たな行政課題に的 確に対応するためには、安定的な税財源の確保が不可欠である。 よって、国においては、都市行政が果たしている役割とその現場の実態を十分踏ま え、都市税財源の充実強化に向け、下記事項の実現を図られるよう強く要請する。 |
記 |
1.地方税財源の充実強化 (1)地方が担う事務と責任に見合う税財源配分を基本とし、当面、税源移譲による 国・地方の税源配分「5:5」の実現を図ることにより、地方の財政自主権を拡充すること。 また、都市自治体が行う住民生活に直結した行政サービスの財政需要の急増と 多様化に迅速かつ的確に対応できるよう、一般財源を充実確保する観点から、税 源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系を構築すること。 (2)社会保障の機能強化・機能維持のための安定財源確保と財政健全化の同時達成 を目指した「社会保障・税一体改革」の実現に向け、平成 31 年 10 月に予定され ている消費税・地方消費税率 10%への引上げを確実に行うこと。 また、都市自治体が既に取り組んでいる子ども・子育て等をはじめとする社会 保障の充実のための施策の推進に支障が生じることのないよう、消費税・地方消費税率が引き上げられるまでの間において必要な財源を確保すること。 (3)個人所得税改革に当たっては、配偶者控除・配偶者特別控除の見直しによる個 人住民税の減収額について、地方財政に影響を及ぼさないよう、確実に全額国費 で補塡すること。 (4)固定資産税は市町村財政を支える安定した基幹税であり、市町村の行政サービ スを支えるうえで不可欠なものとなっていることから、引き続きその安定的確保 を図ること。 また、平成 28 年度税制改正において創設された償却資産に対する固定資産税 の時限的な特例措置については、今回限りのものとし、その期限の到来をもって 確実に終了するとともに、その期限までの間であっても対象範囲の拡大は断じて 行わないこと。 (5)ゴルフ場利用税については、その税収の7割が交付金としてゴルフ場所在市町 村に交付されており、市町村のゴルフ場関連の財政需要に対応するとともに、特 に財源に乏しい中山間地域の市町村にとっては貴重な財源となっている。また、 18 歳未満、70 歳以上及び障がい者並びに国体のゴルフ競技及び学校の教育活動 は非課税とするなど、生涯スポーツの実現にも十分に配慮しながら課税しており、 市町村の財源確保のためにも現行制度を堅持すること。 (6)森林環境税(仮称)については、その税収を全額地方の税財源にするとともに、 森林整備等に係る国・都道府県・市町村の役割分担を整理したうえで、市町村の 役割に応じた継続的かつ安定的な財源確保の仕組みとするなど、地方の意見を十 分に踏まえ、具体的な制度設計を行うこと。 2.地方交付税の総額確保と法定率の引上げ (1)地方創生への積極的な取組をはじめ、医療・介護等の社会保障、施設の老朽化 や防災・減災対策を含めた社会資本整備、地域の人口動態や行政区域の拡大等に 伴う新たな対応など、都市自治体の行政運営に必要な財政需要については、単独 事業を含め的確に地方財政計画に反映させ、地方の安定的な財政運営に必要な一 般財源総額を確保すること。 また、地方交付税については、引き続き、財源調整・財源保障の両機能を強化 するとともに、その総額を確保すること。 (2)恒常的な地方交付税の財源不足については、臨時財政対策債によることなく、 地方交付税の法定率の引上げ等により対応するとともに、地方の固有財源である 「地方交付税」を特会直入とする「地方共有税」に変更すること。 (3)地方創生への積極的な取組を推進するため、地域の実情に応じたきめ細かな施策が実施できるよう、地方財政計画に計上された「まち・ひと・しごと創生事業 費」を拡充・継続すること。 3.地方の実態を踏まえた歳出改革の実現 (1)地方歳出の大半は法令等に義務付けられた経費であることを十分に踏まえ、国 の制度や法令の見直しを行わずに地方の歳出を見直すことは断じて行わないこ と。 また、いわゆるトップランナー方式を含む地方の歳入歳出の効率化を議論する 場合は、地方の財政力や行政コストの差は、人口規模や高齢化率、経済情勢、地 理的条件など、歳出削減努力以外の差によるところが大きく、一律の行政コスト 比較にはなじまないことに十分留意すること。特に地方交付税の基準財政需要額 については、地方自治体の標準的な水準における行政を行うために必要となる経 費を反映するものであることに留意すること。 (2)トップランナー方式による効果が地方財政計画に反映されるよう、計画策定を 工夫する必要があるとの議論があるが、地方の努力により行政コストを下げた分、 地方の財源が削減されることになれば、地方自らが創意工夫を行うインセンティ ブが阻害され、地方の改革意欲を損ねることから、地方の行財政改革により生み 出された財源は必ず地方に還元すること。 (3)近年の地方における基金の増加をもって、地方財政計画の歳出の適正化等を速 やかに行うべきとの議論があるが、都市自治体においては、独自に財政支出の削 減に努めながら、不測の事態による税収減や災害への対応に備えるとともに、地 域の様々な課題に対処するため、各々の判断に基づいて基金を積み立てていると ころであり、地方の基金残高が増加していることをもって短絡的に地方歳出を削 減しないこと。 (4)都市自治体においては、更なる歳出効率化に向けて、公共施設等総合管理計画 に基づく公共施設の更新・統廃合・長寿命化等の取組が本格化することから、引 き続き十分な財源を確保すること。 以上決議する。 平成29年6月7日 全 国 市 長 会 |
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