第83回全国市長会議 決議

地震・津波等防災対策の充実強化に関する決議


 我が国に未曾有の被害をもたらした東日本大震災の発生から2年余りが経過し、都市自治体においては、この震災を教訓に、現在、様々な防災・減災対策の充実・強化を図っているところである。
 このような状況の中、政府は、南海トラフで起こり得る最大級の巨大地震・津波が発生した場合の被害想定を公表し、犠牲者は 32 万 3,000 人、被害額は 220 兆円に上る等、過去に例を見ないほど甚大な被害が出ると予想している。
 また、切迫性が指摘される首都直下地震等の大規模地震、さらには、火山災害、大型化する台風、頻発する集中豪雨、竜巻等の突風による災害の発生も予想されることから、これらの災害から、可能な限り被害を最小限に抑止するため、耐震化率の向上や出火防止対策、住民の避難意識啓発、さらには避難の迅速化等ハード面・ソフト面の様々な防災・減災対策をより一層進めていくことが急務である。
 よって、国は、災害に強いまちづくりを推進し、国民の生命と財産を守るため、下記事項について、迅速かつ万全の措置を講じられるよう強く要請する。



1.地震・津波対策の充実強化について
(1)「南海トラフの巨大地震による震度分布・津波高及び人的・物的被害想定」に基づき、早急に防波堤、海岸・河川堤防、橋梁などハード対策と情報伝達体制の充実などソフト対策を組み合わせた抜本的な地震・津波防災対策を策定するとともに、この巨大地震対策に関して、財政措置を含めた南海トラフ巨大地震対策特別措置法(仮称)を制定すること。
 また、日本海側及び太平洋側における地震・津波に関する調査研究を積極的に進め、実効性のある地震・津波の予測と被害想定を示し、地域防災計画の見直し、並びに防災拠点施設の整備やハザードマップの整備等、防災対策の推進について支援措置を講じること。
(2)国民の生命と財産を守る強靭な国土を構築するための「防災・減災等に資する国土強靭化基本法案」の早期成立を図り、対策を強く推進すること。
(3)首都地域には、膨大な人口に加え、政治、行政、経済の中枢機能が高度に集積しており、首都直下地震が発生した場合、人的・物的被害が甚大になる上、国民生活や経済活動が危機的状況に陥ることが懸念されることから、首都圏特有の被害状況の分析を行った上で、首都直下地震に対する総合的な対策を講じること。
(4)広域的で甚大な災害に的確に対処できるよう、国の危機管理組織体制を整備し、国と自治体及び関係機関の緊密な連携により被災地を早急かつ効果的に支援する広域支援体制を構築するとともに、「基幹的広域防災拠点」を全地域に早急に整備すること。
(5)津波等の災害発生時においては、正確な災害情報を迅速に住民へ伝達することが不可欠であることから、都市自治体が行う同報系防災行政無線等の整備について、財政措置の拡充を図ること。
 また、津波避難タワーの設置等による津波緊急避難場所の確保、緊急避難場所の避難階段や手すりの整備、避難道路の整備、海抜表示板の設置等、津波に対する防災体制の確立に向けた取組みについて財政措置の拡充を図ること。
(6)国道等が津波被害想定区域にあり代替道路もない区域の未整備の高速道路については、救助・救急・物資の緊急搬送に不可欠であるため早期に完成すること。
 また、東日本大震災において高速道路の盛土法面が津波緊急避難に有効であったことから、高台の高速道路施設用地などを緊急避難場所として、早急に利用できるようにすること。
(7)津波による被害が想定される地域の住宅等の移転に係る土地利用の規制緩和など、地域の特性と実情を考慮して柔軟に対応すること。
(8)耐震化等の推進について
@ 避難所となる学校施設や防災拠点となる庁舎等の耐震改修及び補強整備を推進するため、財政措置を拡充すること。
A 住民の安全・安心を確保するため、社会教育施設等の公共施設の耐震化について、財政支援の拡充を図ること。
B 水道施設及び管路の耐震化推進のため、水道水源開発等施設整備費国庫補助金の採択基準を緩和すること。
C 民間住宅等の耐震改修を促進するための支援措置を充実すること。
(9)国は液状化の発生メカニズムの解析と液状化対策の調査研究を進め、液状化の危険性の高い地域の住宅に対する液状化対策基準など、防災・減災対策や、被害が発生した場合の復旧対策に向けた指針を作成するとともに、液状化対策を推進するための法整備や住宅への財政支援制度を早期に確立すること。

2.防災・減災対策の充実強化について
(1)自治体が独自に取り組む被害想定のシミュレーションやそれに基づくハザードマップの作成及び改定等、防災体制の確立に向けた取組みについて、財政措置の拡充を図ること。
(2)火山防災については、大きな被害が懸念される火山灰や融雪型火山泥流等の更なる分析、避難等実際の運用、火山情報の共有化、国・都道府県・地方気象台・火山専門家との連携のあり方など、今後も引き続き、調査・研究を行い、防災対策に係る協議を継続すること。
 また、火山情報に応じた高速道路活用の防災体制がとられるよう、その体制整備を図るとともに、避難路・輸送路対策として道路網の整備を早急に行うこと。
(3)竜巻等局地的な自然災害においても、現行の被災者生活再建支援制度の適用要件の緩和等、弾力的な運用を可能とする制度改正を行うこと。
 また、竜巻等の突風の監視・予測技術の高度化、予想情報の公表、住民の避難手段等について必要な措置を講じるとともに、関係機関が連携し竜巻被害の調査・分析を実施し、被害対応モデルの高度化を図ること。
(4)住民の安全・安心を確保するため、消防・救急無線や防災行政無線の施設整備及びデジタル化に係る整備費用、維持管理費用等について、財政措置を拡充すること。

3.発災時の支援対策の充実強化について
(1)被災自治体への支援を効果的に行うため、災害救助法及び関係する諸制度において、支援物資の提供、職員派遣等の都市自治体間の支援に係る仕組みの確立と財政措置を講じること。
(2)災害復旧・復興を早期かつ着実に進めるため、国が負担する災害復旧事業の採択基準の緩和及び事務手続きの簡素化等の措置を講じること。
(3)帰宅困難者への対策として、一時滞在施設の確保や事業所の社会的責任の明確化を推進するなど、帰宅支援において行政や事業者を含めた関係機関が連携を図れる体制を整備すること。
(4)大規模災害発生時の支援や受入決定の迅速化を図るため、受入自治体における「費用負担」や「役割」等、避難者支援の枠組みを構築すること。

以上決議する。

平成 25 年6月5日

第83回全国市長会議